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三菱自の開発部門、日産出身の山下副社長「エンジニアが苦しんできたのではないか」

改革へまずメスを入れること
三菱自の開発部門、日産出身の山下副社長「エンジニアが苦しんできたのではないか」

山下副社長執行役員(右)、益子会長兼社長CEO

 三菱自動車は燃費不正問題の実態を解明するため設置した特別調査委員会の報告を受け、再発防止に向けた取り組みを本格化する。その中心的な役割を担うのが日産自動車で開発担当副社長を9年務めた山下光彦三菱自副社長だ。特別調査委は経営陣の開発部門に対する関心の低さや開発業務量の多さを問題視した。山下副社長は幹部が自ら開発現場に飛び込むような仕組みなど独自の処方箋を示し、不正の舞台となった開発部門の改革に乗り出す。

 「車の性能にとって燃費は大事な要素であり、役員が開発現場に入り込んで議論できていれば燃費不正問題も防げたのではないかと見ている」。山下副社長は経営幹部が開発現場と技術論議するための会議が設けられていなかった開発部門の仕組みに疑問を投げかける。その上ですぐに取り組むべき対策として、「私自身が開発現場の中で議論に参加できる組織を作っていきたい」と述べた。

 また調査委から経営陣が開発現場を把握していないと指摘された点については、「開発部門では部長から副社長まで5階層あり、他社と比べても多いと言わざるを得ない」と分析。縦に長い組織が結果的に全体を把握することを難しくしているとし、「フラットな文鎮型の組織にし、開発現場のより近いところに経営幹部を置く」との考えを示した。

ツールを整備して開発工数の見積もり精度を引き上げる


 開発部門の業務量が多く現場が疲弊しているとされた点については、「開発にかかる工数を見積もるツールがそろっていない」(山下副社長)と指摘。例えば車の開発ではエンジンや車体など機能ごとにどれだけの人数が必要かを正確に把握することが重要になる。

 しかし三菱自では過去の経験に基づいて見積もりをしているため、正確性を欠いた場合にある機能を担当する部署に負荷が偏り、「その中でエンジニアが苦しんできたのではないか」と推測。ツールを整備して開発工数の見積もり精度を引き上げる意向を示した。

 開発部門では過去の不祥事の際も社内改革に留まっていたが、山下副社長が外部の視点を持ち込んで進める改革に益子修三菱自会長兼社長は「今までと違い、成果が期待できる」と信頼する。

 一方、三菱自は日産と資本業務提携することで5月に基本合意した。益子会長は「日産とのシナジーを最大限活用して開発計画の最適化を図り、三菱らしいクルマづくりに取り組む」とし、日産との協業にも期待を寄せる。

 資本提携では特別調査委の調査で重大な悪影響があると合理的に見込まれる事実が見つからないことなどが条件だが、「調査を受け何か変わるようなことはない」(日産広報部)とし、日産は予定通り提携手続きを進める。三菱自は日産との資本提携をテコに、再発防止策を徹底することが、信頼回復への一歩となる。
(文=西沢亮)
日刊工業新聞2016年8月4日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
山下さんだけでは到底改革は難しい。日産のメンバーを入れたクロスファンクショナルチームをいくつか作って実行に移す方が良いだろう。

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