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「日本機器製造」という商号から想像できないインド料理屋はなぜ倒産したのか

社員寮の火災で外国人労働者の就労問題が表面化
 6月24日に日本機器製造が倒産した。商号から連想するイメージに反して、インド料理屋を経営していた同社の倒産の背景には外国人の就労問題があり、多くのメディアで報道された。

 設立は1963年12月。当初は金属機器の製造販売を手がけていたが、業態変更し、近時はインド料理店を経営。『shanti(シャンティ)』の屋号で、「駒込本店」「北店」「南大塚店」「巣鴨店」「東池袋店」の5店舗を展開していた。

 インド人やバングラデシュ人の外国人従業員が調理する本格的なインドカレーを庶民的な価格で提供。地元では相応の知名度を誇っており、2015年11月期には年売上高約1億円を計上していた。

 しかし、今年2月に外国人従業員が住んでいた社員寮で火災が発生。従業員は住む家を失い、会社も費用負担を強いられた。こうしたなか、従業員が日ごろの不遇と生活苦から反発し、給与の未払い問題が表面化。

 従業員側は「過去2年以上、給与が満額支払われていない」として、弁護士を通して代表側と協議しており、その情報を会員制交流サイト(SNS)に投稿していた。

 従業員側が求める未払い給与は計約6200万円。世間から注目を浴びるなか責任からは逃れられないと腹をくくる一方、支払い負担にも耐えられないと判断して自己破産を申請。6月24日付で東京地裁より破産手続き開始決定を受けた。

 厚生労働省のリリース資料によると、昨年10月時点の外国人労働者数は約90万7800人。定期調査では3年連続で過去最高を更新している。

 製造業だけでなく、近年は飲食や小売りサービス業における就労者が増えており、身近な存在となっている。一方で、労働環境の改善はあまり進んでいない。今回のように、外国人の就労問題が倒産にまで発展する事例が今後増える可能性は否めない。
(文=帝国データバンク情報部)
日本機器製造(株)
住所:東京都豊島区駒込1−41−14
代表:児玉政之氏
資本金:1000万円
年売上高:約1億円(15年11月期)
負債:約1億1000万円

日刊工業新聞2016年8月2日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
SNS上で話題になっていたのは知らなかった。外国人の就労者もソーシャルで簡単につながれる時代。火災という出来事がより連帯感を強めたのだろう。今後、“劇場型倒産”も増えていく可能性は十分にある。

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