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Amazonの人工知能「エコー」はリビングの支配者になれるか

パーソナルアシスタントの居場所はどこ?
 アマゾンは音声認識機能を搭載するスピーカー、「エコー」を昨年6月に発売している。実際のところ、エコーはスピーカーというよりはリビングルームに置かれたパーソナルアシスタントと考えたほうがよいだろう。話しかければ、音楽をかけてくれるだけではなく、スケジュールから料理のレシピまで、さまざまな情報を得ることができるほか、当然、買い物もできる。機能自体はスマートフォンの音声認識に近い。

 家電をはじめとする、ハイテク機器の多くが音声コマンドによって操作可能になりつつある。アンドロイド端末における検索の20%が音声によるものだったという近年のデータもあり、人間が機械に話しかけ、機械が人間の活動をサポートすること自体が、今では当たり前になりつつある。

 エコーの日本での発売は未定であるが、英語圏では既にヒット商品になっている。製品レビューには、「人間と会話していると錯覚する」というようなものもあり、アマゾンの音声認識技術が、アップルやグーグルに引けを取っていないことを示している。

 また、リビングルームに置かれることを想定しているためか、スマートフォンのように特定の個人の話し言葉だけでなく、家族全員の話し言葉を、ある程度の距離からでも正確に認識することにも配慮がされている。

消費者に本当に欲しいものを気づかせてくれる?


 アマゾンは、家族がさまざまな生活シーンで何げなくエコーに語りかけ、エコーがそれに応えるというプロモーションビデオを公開しているが、これをみると我々がかつて描いたコンピューターと人間の関係が具現化されている。

 グーグルが今年発表した「グーグル・ホーム」も同様の機能を備えていると思われるが、アマゾンはリビングルーム戦略において、グーグルに先んじているとも考えられる。

 創業者で最高経営責任者(CEO)のジェフ・ベゾスはこれまで自社のAI戦略に関して具体的なことを語っていない。しかし、エコーを市場に投入することによって、家族単位での生活に密着したデータを取得し、それを現在の本業に生かそうとしていると考えればよいだろう。
 
 アマゾンは、消費者それぞれが理にかなったように感じる、あるいは本当に必要なものを気づかせてくれたと思うような提案を行うことで消費を促し、これまで成長してきた。

 これはアマゾンが購買履歴に基づくアルゴリズムによって可能にしてきたものであるが、今後は、リビングルームに置かれた人工知能からも消費者のさまざまな需要や要望を、より敏感に感じ取ろうとしている。
(文=湯川抗 昭和女子大学グローバルビジネス学部ビジネスデザイン学科教授)

ファシリテーターの見方


 アマゾンのAIスピーカー「エコー」はアレクサという名前で、スキルが2000近く販売されています。スマホアプリやペッパーのロボアプリと同じモデルで、いろんなデベロッパーがスキルという形でアプリを開発しました。2000も集めたのは、さすが米国です。日本のコミュニケーションロボットとは桁が違います。それでもスマホとは桁が違います。AIの賢さはデベロッパーコミュニティの地力が決めるでしょう。
<続きはコメント欄で>
日刊工業新聞2016年7月27日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
 アマゾンとしては対話ボットを通してどんなプラットフォームを抑えたいかが焦点です。対話ボットが居るべきはリビングなのか、車なのか、ポケットなのか。ドコモの羊の執事やアップルのSiriはポケット。ペッパーはリビングで、シャープのロボホンはどっちでも。外出先までついて行けるポケットの方がサービスの幅が広くなり、データの価値も増しますし、対話ボットでなくてもいろんなアプリでデータが採れます。ところで数年前までリビングの主役はテレビと日本のメーカーは言っていました。エコーに座を譲るのか、ポケットに戦場を移すのか、または家電ネットワークや家で勝負するのか。どのみちアプリを開発するデベロッパーがついてこないと参戦すらできません。 (日刊工業新聞社科学技術部・小寺貴之)

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