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東京だって地産地消!八王子パッションフルーツ、狭山みかん…ブランド化の成果着々

東京だって地産地消!八王子パッションフルーツ、狭山みかん…ブランド化の成果着々

東京・八王子産のパッションフルーツが店頭に並ぶ(八王子市、東京都農林水産振興財団提供)

 東京都は大都市でありながら、トウキョウXや東京しゃもなどのブランド畜産物や全国2位の生産量を誇る小松菜など多様な農産物を生産している。農業者の新たな取り組みを支援するため、東京都農林水産振興財団内にチャレンジ農業支援センターを設置し、東京の強みを生かした魅力ある農業経営の支援効果も表れてきた。農業の産業力を強化し、地産地消も進める東京都の農業施策について現状を追った。

ロゴ、パンフレット制作…増える利用者


 東京都農林水産振興財団チャレンジ農業支援センターでは、2013年度から農業者の課題を解決するため、農業者の相談内容に応じて経営コンサルタントや流通・市場関係者、食品加工業関係者、IT関連の技術者、デザイナーら毎年約50人の専門家から人選し、農業者へと派遣している。専門家派遣による相談は5回まで無料だ。13―15年度までに延べ151人の専門家が登録され、派遣回数は3年間で678回に上る。5日時点で13年度比2倍強のペースに当たる41件の農家に派遣済みだ。

 課題解決した内容で多くを占めたのが販売促進のためのロゴマーク、パンフレット作成、ホームページの制作だ。デザイナーがロゴマークを作ったことにより「店頭での見栄え、評判もよく売れ行きがいい」のだという。16年度からは専門家のアドバイスを形にするための補助も一体化し、一貫支援を始めた。助成対象経費2分の1以内(1事業実施体当たり25万―250万円)の補助支援が受けられる。オリジナル出荷袋やPR用品ののぼり旗などをつくる際、持ち出し費用もこれで半分浮くことになる。

段ボール箱、シールデザインで認知度向上


 専門家派遣による課題解決した事例の中でも大きな効果を得たのが、八王子農協パッションフルーツ組合が依頼した「パッションフルーツ段ボール箱のデザインとシールのデザイン」支援だ。

 名産品に乏しかった八王子市の現状を憂えた若手農業後継者8人が知恵を出し合い、パッションフルーツの栽培を始めて売り出し中だ。

 八王子市民になじみのないパッションフルーツをいかにPRするかということで、まずはキャラクター「フルーミン」を作り、それに基づいたデザインの出荷箱をつくった。今では「八王子道の駅」での販売で活用し、とくに子ども連れの女性客に好評だという。八王子でパッションフルーツを作っている、という認知度も高まり、パッションフルーツの加工などへも広がりも出てきた。

みかん園、若年層の来場増


 農園PR用ホームページ作成での効果も上がっている。みかん狩り農園業の小林農園小林みかん園(武蔵村山市)は、来場客から「いつ開いていますか」「雨の時も実施するのですか」といった電話での問い合わせが多く、その対応で時間をとられることがしばしばだった。

 そこで、みかん園までの来場案内や注意事項、必要事項をホームページ上で記載し、状況変化もブログで内容を更新するといった有効活用できるホームページに作り直すことを相談した。「東京狭山みかん 小林農園」を開設すると、年齢層の若い世代20―40歳の来園が増え、多様な集客効果があった。電話での問い合わせも減り、効率的にみかん狩り園を開催できるようになった。

 農産加工品開発の支援としては、国際製菓専門学校(横浜市西区)から専門家を派遣してもらい、「自家産小麦を使ったオリジナルクッキーの開発」を実施した。狭山茶と狭山茶を元とした東京紅茶を使ったクッキーを製造、日持ちするクッキーを販売メニューに追加したことで、販売所での収益性向上などに役立っている。
日刊工業新聞2016年7月11日 中小・ベンチャー・中小政策面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
東京にも意外と畑が広がっている地域があります。住宅街の合間にもちょこちょこと畑があり、そこで採れた野菜を軒先で売っていたりします。身近で観光農園や農業体験ができるのは子育てにもよさそうです。

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