財務情報だけで分からない企業の新たな投資指標「ESG」とは

環境・社会・企業統治の3つのワードで成長、不正を見極め

 6月中旬、都内で開かれたシンポジウムで情報開示と企業価値の評価について話し合われた。100人近くが聴講した議論の中心となったのが「ESG投資」だ。  ESGは「環境・社会・統治」の英語の頭文字をとった言葉。気候変動や資源枯渇など環境問題への取り組み、社会的責任、企業統治に関わる情報がESGだ。ESG情報を企業の成長性を見極める材料とする投資家が増えている。  国際組織の「グローバル環境投資協会」によると、2014年の世界のESG投資の総額は21兆ドル(約2100兆円)となり、12年比61%も拡大した。欧州が6割、米国が3割を占め、日本を含むアジアは1%にも満たない水準だった。  ESGが重視されるようになったきっかけの一つが、08年秋のリーマン・ショックだ。短期利益を追求した企業の破綻が相次ぎ、投資家も損失を抱えた。現在でも好業績の企業が不正を犯したり、法令違反に至らない不祥事でも株価が急落したりする企業が少なくない。  決算などの財務情報だけでは、適切な投資判断ができなくなった。三井住友信託銀行経営企画部の金井司理事・CSR担当部長は「財務情報を確かめるために、ESGが重要になった」と指摘する。  ただ、企業が開示するESG情報をどのように評価するのか、投資家もまだ手探りのようだ。ニッセイアセットマネジメントの井口譲二チーフ・コーポレート・ガバナンス・オフィサーはまとめた資料で、Eの例として「環境技術、ビジネスチャンス、環境制約」を示した。  例えば二酸化炭素(CO2)の排出規制が世界中で強まると、省エネルギー技術や再生可能エネルギー技術を持つ企業には成長の可能性が生まれるからだ。 Sは人材の多様性、人材育成方針、従業員の人権への配慮など。Gは役員、社外取締役、株の持ち合いなどの情報だ。いずれも「風通しの良さ」などを知り、不正を犯さない企業かどうかを判断する材料となる。  企業は中期経営計画で投資家に3年や5年先の業績目標を示してきた。ESGは定量的な目標を出せなくても、将来の事業リスクを認識し、長期的な成長に向けて布石を打っていることを伝えられる。  日本でもESG投資拡大の兆しが出ている。15年秋、世界最大の年金基金である日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が国連責任投資原則(PRI)に署名し、ESGを重視すると表明した。  長期の安定配当を求める株主が増えた方が、企業も短期の業績に振り回されずに済む。将来を見据えた技術開発にも打ち込みやすい。井口氏は「ESGをどう開示するか、取締役会での議論が重要になるだろう」と話す。 ※日刊工業新聞で毎週火曜日に「環境・CSR新ワード」掲載中

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