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動き出すか、日本版「オープンイノベーション2.0」

協議会が初の白書。既存のやり方だけにこだわり続けるとゆで蛙になる
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が設立した「オープンイノベーション協議会」(野路国夫会長=コマツ会長)は、初めての白書を作成し、新しいオープンイノベーション(OI)の仕組みを産業界で広く推進することを明記した。8日に公表する。1対1での共同開発といった従来型のOIに対し、顧客との新サービス共創や、地域一体で社会的課題の解決を目指す「OI2・0」と呼ばれる欧州の新たな潮流を推進する。

 日本の大手企業の大半が産学連携を推進している。だが、OI2・0のように多くの関係者を巻き込み、製造業とITが融合したIoT(モノのインターネット)など、新産業の開拓に結びつける動きは十分ではない。

 他方、トヨタ自動車が人工知能(AI)や配車サービスを手がける企業と相次ぎ提携。安定した内需を見込める東京急行電鉄も、ベンチャー企業支援によって新事業の創出を狙うなど新たな取り組みを進めている。同協会では、このような経営姿勢をセミナーやマッチングイベントなどを通じ、産業界全体に波及させる狙いだ。

 また白書では、OIを実現している企業では、経営トップ自身がOIの意義を理解し、インセンティブ制度などで組織全体で外部連携を促す仕組みがあると分析した。米国シリコンバレーのほか、ドイツの産学連携の仕組み「フラウンホーファーモデル」など海外事例も掲載した。同協議会は、2015年2月の設立。白書の発行は主要活動の一つとしてきた。今後は隔年程度の発行を計画する。


ファシリテーター・八子知礼氏の見方


 このような形でオープンイノベーションが推奨されることを歓迎すると共に、米国で行われているようなこのOIを日本的に解釈して進めることで課題先進国日本ならではの方向性を素早く打ち出していく事に期待したい。弊社ウフルも大手企業・団体との協業案件や複数企業のパートナーコミュニティを推進しているが、自社だけ、大企業だけで検討した時に比べてオープンイノベーション型の良いところはアイデアの出方と検討スピードが圧倒的に違う点だ。
<続きはコメント欄で>
日刊工業新聞2016年7月8日
八子知礼
八子知礼 Yako Tomonori INDUSTRIAL-X 代表
 早速様々な手応えを感じている一方で、課題も認識している。秘密情報や著作物の扱い方といった基本的かつ明示的なことに加え、競合関係にある企業同士の参画、依然として検討や手続きが遅く利権として1社で囲い込む傾向の強い大企業のスタンス、検討結果を採用する際の官公庁などの調達取引基準などに代表される既得権益擁護派との対立だ。  また、取り組む前からできたときの懸念事項を並べて前に進もうとしない姿勢を保つ守旧派もある。オープンイノベーションに限った話ではないが、既存のやり方だけにこだわり続けるとゆで蛙のように少しづつ負け始める。新たな取り組みに対する積極性や柔軟性がこれまで以上に求められるようになってきている。

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