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スリートップで挑むジャパンディスプレイの“構造改革元年”

元シャープ役員は営業担当の副社長に。スマホ依存からの脱却へ道険し
スリートップで挑むジャパンディスプレイの“構造改革元年”

左から元シャープの方志副社長、有賀社長、本間会長兼CEO

 ジャパンディスプレイ(JDI)が、事業構造改革を本格化している。日本の液晶パネル生産ラインの一部を停止したほか、中国に4カ所ある工場の再編にも着手。利益率の改善に向けた体制を構築しつつある。次のテーマは売上高の9割弱を占めるスマートフォン向け事業からの脱却だ。2019年3月期に非スマホ事業の生産比率を33%にする目標に向け、車載など他の市場の開拓に乗り出した。

 JDIはこれまで、スマホ市場の成長とともに事業を拡大してきた。しかし中国市場でのシェア低下や市場の鈍化などで、工場の稼働率が悪化。さらに中国パネルメーカーの台頭により価格競争が激しくなり、収益力は低下している。

 「スマホ市場の変動性の高さやビジネスの厳しさが身にしみた」―。本間充会長兼最高経営責任者(CEO)は事業の難しさをこう説明する。そこで利益率の改善を喫緊の課題に掲げ、”脱・スマホ”をテーマとする事業構造改革を急いでいる。その改革の基盤となるのが固定費の大幅な削減だ。本間会長も「16年は事業構造改革元年」と位置づけ、高収益体質に向けた課題解決の必要性を認める。

(18年度に営業利益率8%の山は高い)

 まず液晶パネル製造の前工程を手がける東浦工場(愛知県東浦町)と、茂原工場(千葉県茂原市)の旧式ラインを順次停止する。加えて中国では後工程を手がける関連会社を売却し、残る3工場も統廃合を検討する。これにより向こう3年間で、420億円のコスト削減効果を見込む。

車載やPC向けの受注伸ばす


 同時に「脱スマホ」に向けても動き始めた。第2の柱として狙うのが、車載向け。強みとする低温ポリシリコン(LTPS)液晶技術で「低消費電力とデザイン性を差異化要素としてシェアを取る」(有賀修二社長兼最高執行責任者)。

 すでに、より低消費電力で、狭額縁を実現する次世代基盤技術を開発している。これをテコに19年3月期は車載向けで1500億―2000億円の売り上げを計画する。

 第3の柱に位置付けるのが高精細ノートパソコンやタブレット端末、サイネージなどの新規領域だ。パソコンは海外メーカーからの受注が見えており「18年3月期には売り上げが立つ見込み」(本間会長)だという。

 パネル各社の競争が激しくなる中で勝ち残るには、収益源の創出に向けて新事業の種まきが不可欠だ。構造改革で事業基盤を固めつつある中、JDIは差異化された新事業を育成して競争から抜け出し、成長路線への移行を急ぐ。

シャープでの人脈・経験生かす


REF:日刊工業新聞2016年6月17日
 ジャパンディスプレイ(JDI)はシャープの元専務執行役員の方志教和(ほうし・のりかず)氏(63)を副社長執行役員として招へいした。就任は7月1日付で、本間充会長、有賀修二社長に次ぐナンバー3として営業のほか、車を除く産業用やパソコン用中型液晶などの液晶事業を担当する。

 方志氏はシャープで液晶事業を統括し、シャオミなど中国スマートフォンメーカーに太いパイプを持っていた。しかし15年6月に液晶事業悪化の責任を負って専務執行役員を退任して顧問となり、16年5月末に退職していた。

(2016年7月4日 電機・電子部品・情報・通信)
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
JDIの業績はスマホ市場の浮き沈みやシェアの獲得状況に左右されてきた。第2、第3の事業の柱を作るのは喫緊の課題だが、とはいえ構造改革状態からも脱せていないのが事実だ。2016年度は構造改革による足場固めの仕上げと、2017年以降の飛躍に向けた種まきの1年になるだろう。4月には車載向け以外の事業を手がける「ディスプレイソリューションズ事業部」が設置され、それを統括する役員として7月1日付けで方志教和副社長が就いた。方志副社長は営業も担当する。早速、シャープで培ってきた人脈や手腕が試されそうだ。

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