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いざ五輪へ!「下町ボブスレー」キーパーソンに聞く

「作ったモノが世界戦に出る、めったにないチャンス」(細貝マテリアル社長)
いざ五輪へ!「下町ボブスレー」キーパーソンに聞く

細貝淳一マテリアル社長

 東京都大田区の町工場を中心に結成する下町ボブスレーネットワーク推進委員会は、冬季五輪種目「ボブスレー」のソリを4年以上にわたり製造する。日本代表チームは不採用を決めたが、技術力の高さを認めたジャマイカ代表チームが採用を決定。2018年の平昌(ピョンチャン)五輪出場に期待がかかる。参画した経営者らに意気込みやソリを支える技術を聞く。第1回はプロジェクトの創始者でゼネラルマネージャーの細貝淳一マテリアル社長。

 ―平昌五輪に向けた戦略は。
 「我々が構築してきた理論とジャマイカチームの技術ディレクターであるトッド・ヘイズ氏の実績を近づけてより速いソリを作る。組み込まれているモノの技術は十分。ここに実績という“スパイス”を加える」

 ―下町ボブスレーの一連のプロジェクトを始めて、大田区は変わりましたか。
 「いろいろな点で“気づき”があった。区内にある知らなかった工場や技術を知り、仲間の層が厚くなった。また技術を教え合える環境も作れた。若い人材を引きつけるツールにもなっている」

 ―平昌五輪以降はプロジェクトのオブザーバー的な立場になるそうですね。
 「新たに大田区発の製品を出す手伝いがしたい。強化されたネットワークを生かして“株式会社 大田区”のイメージで仕事ができればと思っている」

 ―五輪に向けた意気込みをお願いします。
 「当プロジェクトは、自分の作ったモノが世界戦に出る、めったにない素晴らしいチャンスだ。人生のモチベーションにもつながる。多くの企業とこの思いを分かち合いたい」


<ボブスレーの設計を担当するマテリアルの鈴木部長と複雑形状に加工した部品>

 マテリアルはボブスレーの部品製造のほか、設計も担当する。設計は同社品質保証開発設計課の鈴木信幸部長が担当。本業でも設計・製作の依頼を受ける環境が整っている。同社の主力はアルミニウムなどの金属材料の切断、加工、販売。材料販売会社として設立したため、素材の特性を把握しており、素材に合わせた適切な条件で加工できる。必要に応じてプラスマイナス0・001ミリメートルの誤差で精度を出す。

 また社内に材料があるため、加工スピードが速く短納期対応が可能。15年には20面パレットチェンジャーを搭載したマシニングセンター(MC)を導入し、工場の一部を自動化した。残業時間を減らし、労働環境整備にも取り組んでいる。
日刊工業新聞2016年6月22日 中小企業・地域経済面
斉藤陽一
斉藤陽一 Saito Yoichi 編集局第一産業部 デスク
新スタートの連載記事です。写真の鈴木部長の表情からも、「下町ボブスレー」プロジェクトの醍醐味が伝わってきます。毎週水曜日の掲載です。今後ともどうぞお楽しみに!

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