ハウステンボスCTOが語る「変なホテル」はなぜ「変化するホテル」なのか

東芝と共に水素で自給自足。幸福、環境、ビジネスの“三位一体”に挑む

 東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「スマートコミュニティJapan2016」の会場で17日、「水素で自給自足~ハウステンボス「変なホテル」と東芝の挑戦」(日刊工業新聞社主催)と題したシンポジウムが開かれた。  東芝の大田裕之次世代エネルギー事業開発プロジェクトチーム統括部長は、水素で発電するエネルギー供給システム「H2One」の開発経緯および導入事例を解説。同システムが初めて商用導入されたハウステンボス「変なホテル」での利用状況について、富田直美経営顧問&CTOが紹介した。  「水素はモビリティのイメージが強いが、わが社ではエネルギーとして有効とみている」(大田氏)。水素のエネルギーとしての特徴は、以下の3点。 ①水の電気分解で遡れ、燃料電池でまた電気に戻せる  ②劣化せず、半永久的に使用できる ③大量・長距離輸送に適している  このうち、②と③は電気エネルギーの弱点(貯めにくく、運びにくい)を補完するものでもある。電気と水素を組み合わせることで、さらに便利な新エネルギーシステムが確立できるのではないかと考えた。これがH2Oneである。  太陽光発電などが安定した発電量の時は直接供給し、曇りなどで発電量が変動する時はバッテリーを使用し安定した供給をサポートする。逆に夏などで余剰に発電した場合は水素に変換し、貯蔵。発電に利用する。  環境になじむデザインにも注力した。デザイナーが開発段階から入り、「H2O new energy(=H2One)」という名前のアイデアもデザイナー発案だった。もともとコンテナにパッケージングする予定はなかったが、「コンテナに入れればどこでも持ち運べるのでは」という導入先のアイデアから現在の形になった。  2015年グッドデザイン賞の「グッドデザイン・ベスト100」に選出されるなど高い評価を受けている。コンテナ型を生かし、持ち運び可能なタイプも用意している。離島や発展途上国などでの活用も目指している。  ハウステンボスには2016年3月に導入。大きさはテニスコート1面の1割。変なホテルの12室の電力供給に使用され、安定稼働中。365日再生可能エネルギーでまかなうことができる。  “水素”というと爆発するというイメージを持つ人も多いだろう。「危険性は確かにあるが、水素が漏れないよう配管の接続部分は溶接にするなどの対策は重ねている」(大田氏)。  しかし現状では水素発電より、電気を購入する方がコストは安い。なぜハウステンボスは導入を決めたのか。  富田CTOは「世界唯一の、環境をきれいにしながらビジネスを継続する観光都市を目指している」と話す。もともとハウステンボスはヘドロまみれだった土地を森にするべく開発が進められ、雨水が土壌にしみこむように道路を石畳にするなどの取組みを積極的に行ってきた。  「『変なホテル』の意味は『変化するホテル』。最先端の実証を行う場」(富田CTO)というように、ロボットの導入などの実証実験を進めてきた。その中で着手したのがH2Oneの導入だ。同社の澤田秀雄社長が水素発電システムに興味を持ち、東芝に声掛けをした。  東芝側もH2OneのBCP用のスペックを変えれば常時利用が可能なのではないかと考えていたところだった。「ハウステンボスのホテルをモジュール化して他地域に展開するという「スマートホテル構想」にH2Oneがぴったりだと感じました」(大田氏)。  コストがかかっても実証を進めることに対して、富田CTOは「先駆的な取組みを行っていくと、ナレッジがたまるだけでなく新しい提案がどんどん舞い込むようになる」というメリットを挙げる。  しかし、ただ受け身で実証の場所を提供するのではない。お客さんが実際に使用する「ビジネス」の場で実証を行うため、厳しい要求をすることもある。成果や要求をきちんとフィードバックし、新しいシステムを作り上げていく。  ハウステンボスの環境に配慮したビジネスモデルは、次のような理念のもとに進められている。「どんなにおいしいものでも汚いところで食べればまずく感じますよね。人間の幸福は環境が整ってこそ。環境を維持するために技術を使い、さらにビジネスが成り立たなければ継続しない。幸福、環境、ビジネスの“三位一体”を重視しています」(富田CTO)。  ハウステンボスでは小規模の導入だったが、今後東芝はH2Oneを離島や途上国に導入していきたいという。

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