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独コンチネンタルが紋別のテストコースでアピールした自動運転技術

日本市場での部品拡販と標準化狙う
独コンチネンタルが紋別のテストコースでアピールした自動運転技術

北海道紋別市のテストコースを自動運転用に拡充し、技術力向上を図る

 自動車部品大手の独コンチネンタルが、自動運転技術で日本市場における存在感を高めつつある。これまで冬期試験専用だった紋別テストコース(北海道紋別市)を、自動運転用に拡充。1年を通じて実証試験ができるよう、環境を整えた。同社が狙うのは部品とインフラという、ハードウエアとソフトウエアの両面での市場の取り込み。2020年の完全自動運転実現を焦点に、紋別をその橋頭堡(ほ)とする構えだ。

 おそるおそるアクセルから足を離すと、コース上にある速度制限の標識や障害物の有無に従って速度が上がったり落ちたり―。5月、日本法人のコンチネンタル・ジャパンが、紋別テストコースで行った自動運転の技術デモの1シーンだ。披露されたのは各自動車から道路情報を集約して運転制御に使うインフラ技術と、スムーズな運転を実現するブレーキシステム。ドライバーはハンドル操作をするだけで、ゲームのような感覚だ。

 「これまでのビジネスは、作った部品を売るのがメーンだった。今は機能を提供することを常に考えており、それを実現するための部品を作る」。コンチネンタル・ジャパンのクリストフ・ハゲドーン最高経営責任者(CEO)は、こう力を込める。

 先進運転支援技術(ADAS)や自動運転技術の台頭により、部品メーカーのビジネスのあり方は変わりつつある。コンチネンタルが単なる部品メーカーではなく「自動運転システムメーカー」であるためのカギとして力を入れるのが、統合情報管理システム「eHorizon(イーホライズン)」だ。

 イーホライズンは自動車に搭載したカメラ画像などをもとに、走行する複数の車から道路の形状や標識、渋滞情報などをクラウド上に送って解析し、網羅的な道路データを構築するシステムだ。数多の車がセンサーとなり、1台だけでは得られない数百メートル先の情報までカバーする。

 コンチネンタルの視線の先にあるのは標準化だ。多くの自動車メーカーにイーホライズンを採用してもらい、プラットフォームを握るのが狙い。すでにいくつかの企業と提携しており、今も「北米や欧州、日本の企業と商談を進めている」(担当者)という。

 「昔と比べて新しい技術の導入スピードは速まっており、ビジネスモデルは様変わりしている。この動きは歓迎だ」(ハゲドーンCEO)。日本では16年にADAS関連の人員を12年比7・5倍の300人に、ヒューマン・マシン・インターフェース関連の人員を同5倍の100人に増やす。

 さらに紋別テストコースも、さまざまなケースに対応した試験を実施できるよう機能を拡充する計画。より実環境に近づけるべく、信号機や路地など市街地を模した施設の整備も進めるという。

 今後は「歩行者の死亡事故が多いといった、日本特有の課題にフォーカスした開発もしていく」(同)。日本でのシェア拡大に向けた布石は整いつつある。
日刊工業新聞2016年6月15日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
同じドイツの自動車部品の巨人・ボッシュ。売り上げ規模は及ばないが自動運転に関してはコンチネンタルもなかなか負けていない。自動運転技術は完成車メーカー、部品メーカー、さらにはIT勢も加わって勢力争いが激しい。自動運転のカギとなるデジタル地図ではドイツのヒアを、アウディ、ダイムラー、BMWというドイツの3大メーカーが傘下に収めた。ヒアとコンチネンタルはもともと提携関係にあり、コンチネンタルも出資にも興味を持っているといわれる。ヒアにはアマゾンとマイクロソフトがクラウドサービスを提供するという報道も出ている。デジタル地図ではオランダ・トムトムとボッシュが提携関係にあり、さらにはグーグルも圧倒的な存在感を持つ。「イーホライズン」の標準化は簡単ではないが、日系の完成車メーカーとどう連携していくか注目したい。

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