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新しい「霞が関の顔」官僚人事でサプライズは?

財務省は主税局長から35年ぶりの次官。桜井パパが退任した総務省は初の女性官房長
 「霞が関」は人事の季節。財務省や経済産業省など主要官庁は17日付で発令された。アイドルグループ「嵐」の櫻井翔さんの父、桜井俊総務事務次官が退任。さっそく次期東京都知事候補で名前があがるなど、新旧幹部に関心が集まっている。総務省で全府省庁初となる女性の官房長が誕生するなど、審議官級以上の女性幹部は前年の28人から31人に増加。局長級以上の女性は12人になった。幹部職全体に占める女性の割合は前年の4・3%から4・7%に上昇したが、まだ5%未満で「男社会」に変わりはない。良くも悪くもニッポンを動かしていく顔ぶれを紹介する。

財務省


 財務省は田中一穂事務次官(60)が退任し、後任に佐藤慎一主税局長(59)が昇格する。主税局長からの次官昇格は1981年以来35年ぶり。17年度に予定した消費増税延期が決まったことで、社会保障財源を確保する必要があるほか、参院選後の臨時国会では経済対策を盛り込んだ16年度第2次補正予算案の提出を控えるなど経済財政運営上の課題が山積する。

 経済成長と財政健全化の両立にいかに道筋をつけるかが焦点だ。なお浅川雅嗣財務官(58)は留任する。円高進行が懸念される中、引き続き為替相場の安定化など国際金融部門を担う。

<主な幹部の略歴>
◆事務次官
佐藤 慎一氏(さとう・しんいち)80年(昭55)東大経卒、同年大蔵省(現財務省)入省。02年主計局主計官、09年官房審議官、13年官房長、14年主税局長。大阪府出身。
◆主税局長
星野 次彦氏(ほしの・つぐひこ)83年(昭58)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。03年主計局調査課長、06年主税局調査課長、11年官房審議官、15年国税庁次長。愛知県出身、56歳。
◆関税局長
梶川 幹夫氏(かじかわ・みきお)82年(昭57)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。07年関税局関税課長、12年官房参事官、13年国際局次長、14年国際通貨基金(IMF)理事。愛知県出身、57歳。
◆理財局長
佐川 宣寿氏(さがわ・のぶひさ)82年(昭57)東大経卒、同年大蔵省(現財務省)入省。10年官房審議官、13年大阪国税局長、14年国税庁次長、15年関税局長。福島県出身、58歳。
◆国際局長
武内 良樹氏(たけうち・よしき)83年(昭58)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。07年国際局為替市場課長、12年官房審議官、14年国際局次長、15年近畿財務局長。東京都出身、56歳。
◆会計センター所長兼財務総合政策研究所長
根本 洋一氏(ねもと・よういち)82年(昭57)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。08年国際局総務課長、09年官房審議官、10年官房参事官、12年ASEAN+3マクロ経済リサーチ・オフィス事務局長。神奈川県出身、57歳。
◆国税庁長官
迫田 英典氏(さこた・ひでのり)82年(昭57)東大法卒、同年大蔵省(現財務省)入省。04年主計局主計官、10年主計局次長、14年官房総括審議官、15年理財局長。山口県出身、56歳。

内閣府


 内閣府は松山健士事務次官(63)が退任し、後任に西川正郎内閣府審議官(58)を充てる。次官級の内閣府審議官には、武川光夫政策統括官(58、共生社会政策担当)、羽深成樹政策統括官(58、経済社会システム担当)が昇格する。経済社会総合研究所所長には前川守政策統括官(58、経済財政運営担当)が就く。

<主な幹部の略歴>
◆事務次官
西川 正郎氏(にしかわ・まさお)東大経卒。80年経済企画庁(現内閣府)に入り、内閣府政策統括官(経済社会システム担当)、経済社会総合研究所長を経て15年内閣府審議官。東京都出身。
◆内閣府審議官
武川 光夫氏(たけがわ・みつお)東大法卒。81年総理府(現内閣府)に入り、内閣府賞勲局長を経て13年政策統括官(共生社会政策担当)。兵庫県出身。
◆羽深 成樹氏(はぶか・しげき)東大法卒。81年大蔵省(現財務省)に入り、首相秘書官、財務省主計局次長などを経て14年内閣府政策統括官(経済社会システム担当)。千葉県出身。
◆経済社会総合研究所所長
前川 守氏(まえかわ・まもる)東大文卒。82年経企庁に入り、内閣府大臣官房審議官などを経て14年政策統括官(経済財政運営担当)。島根県出身。
◆政策統括官=経済財政運営担当
新原 浩朗氏(にいはら・ひろあき)東大経卒。84年通商産業省(現経済産業省)に入り、首相秘書官、経産省大臣官房審議官などを経て14年内閣府大臣官房審議官。福岡県出身、56歳。
◆政策統括官=科学技術・イノベーション担当
山脇 良雄氏(やまわき・よしお)東大院修了。84年科学技術庁(現文部科学省)に入り、文科省大臣官房審議官を経て14年国際統括官。兵庫県出身、56歳。
◆知的財産戦略推進事務局長
井内 摂男氏(いうち・せつお)東大法卒。83年通産省に入り、経産省中部経済産業局長を経て15年地域経済産業審議官。兵庫県出身、56歳。

経産省


 経済産業省は、“ナンバー2”ポストの経済産業審議官に片瀬裕文通商政策局長(昭57年入省、57歳=以下同じ)を充てる。嶋田隆官房長(昭57、56)が後任の通政局長に就くほか、中小企業庁長官には宮本聡次長(同59、54)が昇格する。一方、官房長には、資源エネルギー庁の高橋泰三次長(昭60、53)を抜てき。将来の事務次官候補に浮上した。

 幹部人事について林幹雄経産相は「成長戦略の一層の具体化、福島復興の加速、エネルギー政策の着実な推進などの重要課題に継続性を持って、着実に取り組むために、菅原郁郎事務次官、日下部聡エネルギー庁長官など多くの幹部を留任させる」と述べた。小幅な体制変更にとどまる中、嶋田官房長の人事がポイント。嶋田氏と片瀬氏は同期入省で“異例”に映るが、環太平洋連携協定(TPP)など通商政策に力を入れる姿勢を鮮明にした。

 林経産相は「経済発展のためには通商政策を強力に進めることが重要。年次にとらわれず適材適所の人事」と説明しており、通政局長を経験した後、事務次官になる可能性もある。官房長に就く高橋氏は製造産業局製造産業機械課長や“出世ポスト”といわれる官房秘書課長を歴任。原子力政策にも精通する昭和60年入省組の“エース”的存在。今後は柳瀬唯夫経済産業政策局長らと経産省の中核を担う。

 また、農林水産省との局長級の人事交流を実施。井上宏司産業技術環境局長(昭59、55)が農水省の食料産業局長に就き、代わって農水省の末松広行農村振興局長(昭58、57)が産業技術環境局長となる。外局では特許庁長官に小宮義則内閣府宇宙開発戦略推進事務局長(昭59、55)が就任。

<主な幹部の略歴>
◆経済産業審議官
片瀬 裕文氏(かたせ・ひろふみ)82年(昭57)東大法卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。09年官房審議官、13年産業技術環境局長、15年通商政策局長。富山県出身。
◆官房長
高橋 泰三氏(たかはし・たいぞう)85年(昭60)東大法卒、同年通商産業省入省。05年製造産業局産業機械課長、13年資源エネルギー庁電力・ガス事業部長、14年資源エネルギー庁次長。東京都出身。
◆地域経済産業審議官
鍜治 克彦氏(かじ・かつひこ)85年(昭60)東大法卒、同年通商産業省入省。05年官房参事官、11年中小企業庁長官官房参事官、15年関東経済産業局長。神奈川県出身、55歳。
◆通商政策局長
嶋田 隆氏(しまだ・たかし)82年(昭57)東大工卒、同年通商産業省入省。08年官房政策評価審議官、12年原子力損害賠償支援機構連絡調整室長、15年官房長。東京都出身。
◆産業技術環境局長
末松 広行氏(すえまつ・ひろゆき)83年(昭58)東大法卒、同年農林水産省入省。10年林野庁林政部長、14年関東農政局長、15年農村振興局長。埼玉県出身。
◆特許庁長官
小宮 義則氏(こみや・よしのり)84年(昭59)東大経卒、同年通商産業省入省。06年経済産業政策局産業資金課長、11年官房審議官、16年内閣府宇宙開発戦略推進事務局長。埼玉県出身。
◆中小企業庁長官
宮本 聡氏(みやもと・さとし)84年(昭59)東大法卒、同年通商産業省入省。12年官房審議官、13年日本貿易振興機構副理事長、15年中小企業庁次長。東京都出身。

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明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
「官僚たちの夏」はこれから。小説のような時代ではないが・・

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