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WWDCでSiriの開放&解放表明、いずれ自動車やロボットにも?

まずサードパーティーの関連アプリの広がりに期待
WWDCでSiriの開放&解放表明、いずれ自動車やロボットにも?

フィデリギ氏によるMacでのSiriのデモ(キーノート映像から)

 日本時間で14日午前2時から約2時間にわたって行われたアップルのWWDC(世界開発者会議)でのキーノート。予想通りハードウエアの発表が一切ない中で、目立ったのは音声アシスタントのSiri(シリ)の存在だ。デベロッパーへのSiriの開放が正式アナウンスされたほか、OS X(テン)あらため秋にリリースされるmacOS Sierra(シエラ)からはMacにも対応する。

 さらに新しいホームオートメーションアプリの「Home」を使ってSiriに話しかけると、照明や電動カーテンなど家の中の機器をまとめて操作できるようになるという。アップルTVでもiPhoneにリモートアプリを入れてリモコン代わりに使い、映画やテレビ番組をiPhone側で音声検索したりチャンネルを切り替えたりするといった技が行える。まずはSiriの進化に向けた開放と解放の第一歩、といったところだろうか。

 さて、キーノートで面白かったのは、ソフトウエアエンジニアリング担当のクレイグ・フィデリギ上級副社長とMac上のSiriとの次のようなやりとり。(キーノートの44:40ごろから)

フィデリギ:「Macはどう?」

Siri:「とても素晴らしい! たくさんのスペースとアルミニウムでできたユニボディの壁。窓(ウィンドウズ)なしでも不満はありませんよ」

 もちろん内容は事前に作り込んであるのだけれども、ウィンドウズを茶化すSiriの「当意即妙」の答えに、会場は爆笑に包まれた。

 Siriは音声アシスタントの先駆けとはいえ、近頃はそれほど話題になることは少ない。音声をより正確に認識し多機能なアマゾンの「Alexa」が人気を集める一方、もともとオリジナルのSiriを開発したメンバーが新会社を作って、一つの会話で複数のアプリに指示を出す次世代音声アシスタント「Viv」の開発を明らかにしており、それらに比べると見劣りするのは否めない。

 そうした状況にあって、今回の発表は、Siriについてアップルお得意のクローズド戦略を転換し、まるでSiriを中心としたエコシステムを作りだそうとしているかのようにも見える。まずはメッセージや配車、写真検索、運動などなど、さまざまなアプリをSiriに対応させ、それらの開発の加速を狙うと同時に、近い将来には、Siriと一体化したさまざまなハードウエアも登場することだろう。すでにAlexaを搭載するアマゾン「エコー」のように、Siriを組み込んだスピーカーの商品化も噂に上っている。それに加え、現在開発中と言われる電気自動車がSiriを搭載するのはほぼ間違いない。

 話は少しずれるが、今回、アップルによるプログラミング言語Swift(スイフト)について、子どもたちが楽しみながら学習するための「Swift Playground」というiPad用無料アプリが発表された。実はSwiftは登場してから2年も経っていないが、すでに10万本以上のアプリの開発に使われているという。

 キーノートを見ながら、今年3月に来日した英国の技術調査会社のロボット担当アナリストが、「非常に使いやすく、ロボットのプログラミングに今後使われる可能性がある」とSwiftについて話していたことを思い出した。ロボット分野では実際、ソフトバンクも5月にアンドロイドOSでペッパー向けのアプリを開発できるようにすると表明している。もしかすると、APIが公開されたSiriとSwiftをセットで採用した家庭用ロボットが、アップルあるいはそれ以外から出てくる日が近いかもしれない。
ニュースイッチオリジナル
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
アップルTVなどの場面で登場するエディー・キュー上級副社長は非常にユニークな人物。ただ、上着のシャツを出したままのだらしない恰好は何とかならないものでしょうか。

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