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電子部品、積極投資はどこまで続く!?

アップル減産を横目に大手6社は前期比で14%増を計画
 電子部品大手6社の2017年3月期設備投資計画は、総額で前期比14・4%増の6695億円になる見通しだ。TDKや日本電産など4社が、同20%以上の増額を計画。村田製作所とTDK、日本電産は、いずれも1000億円を越える投資を予定する。スマートフォン向け高性能部品の需要が、引き続き堅調に推移しているためだ。米アップルによるスマホ減産の影響はあるものの、部品の搭載点数が増加しており、各社は積極的な姿勢を崩していない。

 6社の投資総額は、6000億円を超える見込み。前期比の伸び率は15年3月期の21・1%増や、16年3月期の44・1%増に比べて鈍化するが、投資意欲は衰えていない。

 TDKは村田製作所を超える2000億円を計画。「高周波部品を中心に、受動部品の販売が好調」(同社)なためだ。また戦略成長製品に位置付けるセンサー・アクチュエーター、エネルギーユニット、次世代電子部品の3分野にも積極投資する。16年3月期から18年3月期の合計額予想は、従来計画の3500億―4000億円から800億円を追加して、4300億―4800億円に引き上げた。

 一方、村田製作所はスマホ向けが多い表面弾性波(SAW)デバイスで前期比20%増、積層セラミックコンデンサー(MLCC)で同10%増の能力増強を進める。

 17年3月期のスマホ向け売上高は、為替の影響を除けば同9%増と微増を想定。同30%増を計上した16年3月期に比べると販売鈍化が明確だが、「搭載部品点数の多いLTE市場は、16年3月期に比べて23%伸びる。引き続き成長が見込める」(村田恒夫社長)と力を込める。

 スマホ向けで強気な投資が目立つのが、京セラ。投資額は同26・3%増を計画しており、増加額181億円の多くをスマホやタブレット端末に搭載される小型・薄型の有機パッケージに配分する。

 これを受け、京都綾部工場(京都府綾部市)に約150億円を投じて第三工場を新設する。17年1月に完成し17年春に稼働する予定で、小型・薄型の有機パッケージの増産体制を整える。

 スマホ向け高性能部品の好調は、各社ともおおむね2―3年は続くと見ている。一方でアップルによるスマホの減産や中国スマホメーカーの成長鈍化などのリスクが顕在化し、電子部品業界に暗雲が垂れ込めつつある。

 こうした中、TDKが米クアルコムに高周波部品事業を事実上手放すことを決めるなど、電子部品各社は新たな展開を模索しつつある。17年3月期は活発な設備投資と並行して、次の成長を探る1年になりそうだ。
(文=米今真一郎)


日刊工業新聞2016年6月8日 電機・電子部品・情報・通信
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
かつて巨額な設備投資といえば半導体業界の十八番。それが今では電子部品が取って代わった格好だ。この勢いがいつまで続くのか?長い目で見れば、たとえスマホ市場が鈍化しても、自動車や産業機械、IoTなど電子部品が必要とされる市場はまだまだ成長が期待される。日本勢には、途中で脱落することなく大きな飛躍を遂げてほしい。

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