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恋愛相談、AIが回答。その楽しさと不完全さ

NTTレゾナントがサービス。コミュニティーの活性化が目的で次は介護にも
 ウェブサイトに利用者が質問を投稿し、別の利用者が回答する「Q&Aサイト」。そこに蓄積されたQ&Aデータを人工知能(AI)に学習させ、新たなサービスを生み出す動きが広がっている。NTTレゾナント(東京都港区)は同データを活用し、AIが恋愛相談に答えるサービスを8月に始める予定。オウケイウェイヴはよくある質問と回答を紹介する企業のFAQサイトについて、業務を効率化させる事業などを今夏にも開始する。

 「正解のない『恋愛相談』にAIがどう答えるか。回答を利用者に楽しんでもらい、コミュニティーが活性化すれば良い」。NTTレゾナントのメディア事業部ソーシャルサービス部門の川本真稔担当課長はそう期待する。

 同社の新サービスでは、Q&Aサイト「教えて!goo」に投稿された恋愛相談の文脈をAIが解析する。質問文に並ぶ単語やその順番などから質問の意図を理解し、「教えて!goo」に蓄積されたQ&Aデータから最適解を抽出。24時間いつでも迅速に答える。

 Q&Aサイトは質問投稿後、別の利用者が回答するまでに一定期間がかかるのが難点だった。AIの導入により質問への対応を迅速化し、サイト利用の満足度を高める。またAIが恋愛相談の議論に参加することで、コミュニティーが活性化することも狙う。AIによる回答は「介護」など他のジャンルにも拡大していく。

 一方、オウケイウェイヴが開発したAIは、新たな質問に対する最適解をQ&Aサイト「OKWAVE」のQ&Aデータなどから抽出する。質問の意図は、質問者の年齢・性別といった属性情報や、ログ情報などを基に理解する。

 このAIを活用し、消費者から企業に寄せられる質問の回答作業などの負担を軽減するサービスを提供する。具体的には企業に寄せられる質問についてFAQ担当者が正式回答を作る際、参考となる回答をAIが提示。AIが質問を聞き返しながら一つの回答を導く自動応答サービスなども提供する。

 オウケイウェイヴの浅川秀治取締役はサービス開始に向けて「オウケイウェイヴらしさが出るAIの人格作りを進めたい」と意気込む。また、NTTレゾナントもAIに個性を持たせ、将来は自ら回答文を作成する体制を目指している。

 Q&Aデータにはさまざまな人の知恵や考えが詰まっている。それを学び、人格を持ったAIが、コミュニティーや業務の場にどのような効果をもたらすのか注目される。
(文=葭本隆太)
日刊工業新聞2016年6月3日
原直史
原直史 Hara Naofumi
恋愛相談にAIを使うという。これは、囲碁でプロ棋士とAIが競うとか、自動運転にAIを活用するという話とは、少し違う。恋愛は人間しかできない行為で、感情の領域に属するからだ。人間が人間に相談するとき、相談する側も正解がないことを前提に質問している。不完全な回答が当たり前だ。しかし、これがAIの回答になると、相談者はどのような期待を持って質問をするのであろうか。 AIが最適解を抽出すると言うが、AIが学習するテキストとなる回答は、人間が作ったものだ。だから、AIは回答作成の効率化には貢献するだろうが、回答の不完全さを、カバーするものではない。このことを、サイト運営者だけでなく、相談する側も理解して、使うべきであろう。

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