トヨタ、グーグル傘下のロボット会社買収へ。キーマンは何を考えているのか

米AI子会社、ギル・プラットCEOインタビュー

 米国防高等研究計画局(DARPA)でプログラムマネージャーを務めたギル・プラット博士が、1月からトヨタ自動車で人工知能(AI)を研究する会社「TRI」の最高経営責任者(CEO)を務めている。米グーグル傘下のロボット開発会社ボストン・ダイナミクス(BD、マサチューセッツ州)などを買収する方針を固めたトヨタ。今回の買収にはプラット氏が大きく関与している。日刊工業新聞では昨年12月に同氏に単独インタビュー、その発言の中から買収の意図がくみ取れる。再編集し全文をお届けする。  ―新会社TRIの研究テーマは何ですか。  「三つある。一つ目は車をより安全にする。これにより交通事故や運転手の不注意を減らす。二つ目は車を親切に使いやすくする。高齢者や障害者、ひどく疲れた人の運転を支援したい。三つ目として高齢化社会を支える家庭用ロボットを開発する。トヨタホームやロボット部門と連携する。ロボットと人間が共存しやすい空間デザインを検討したい」  ―AIは検索などの活用が中心でした。自動車の運転はミスが許されず、最も難しい分野への応用ですね。  「自動運転AIは2種類ある。一つはAIと人間が一緒に運転する並行型。AIに判別能力を持たせ人に提案する形で協調させたい。実際にはドライバーが判断するため、AIが事故の原因にならなければ実用化できる。もう一つが直列型。眠っている人を家に連れて帰れるAIだ。AIに完全に依存するため、事故にならないよう完璧な判断が求められる。高速道路など限られた状況から少しずつ範囲を広げたい」  ―AIのアルゴリズムは無償公開されています。トヨタの競争力は何ですか。  「確かにデータと計算資源に価値があり、AIのアルゴリズム自体にはない。トヨタの年間販売台数は1000万台。1台1万キロメートル走ると仮定すると、直近10年間で販売した車から毎年1兆キロメートルの走行データが集まる。私は将来、世界中のすべての車がネットワークにつながると考える。すべての自動車メーカーが走行データを走行状況や販売戦略、安全性向上などに活用するだろう。TRIではデータの収集法と分析AIの両方を開発していく。これまでトヨタは資源を車づくりに投じてきたが、転換期を迎えている。将来、モノづくりとデータ活用への投資額が逆転することもありえるだろう」  ―人材獲得戦略は。  「まずはスタンフォード大学とマサチューセッツ工科大学の近くの2拠点でスタートする。まだ検討中だが、3拠点目は東京大学の近くに設けたい。東大に限らず幅広い機関から人材を募りたい」  ―ヒューマノイドはロボット研究の最高峰の一つです。なぜ、いまトヨタでAIを研究するのでしょうか。  「トヨタは非常に懐が深く、ヒューマノイドとトヨタは同じ課題に直面している。ロボットも自動運転車も、体はある程度できていて課題は頭脳にある。ハードを作ってセンサーを載せるのは簡単だ。だが対象の認識や学習、行動計画、移動計画などソフトを進歩させなければならない」  ―前職の米国防高等研究計画局(DARPA)で率いた災害ロボット競技会も同様でしたか。  「競技会では人型や多脚型など幅広いロボットが提案された。優勝した韓国チームはハイブリッドだ。ロボットの見た目が注目されたが、外見は本質ではない。人とロボットをつなぐソフトが最も重要だ。競技会では通信を制限し、操縦者とロボットを分断した。ロボットを自律化し、人とロボットが互いに相手の状況や意図を考えて対応する。実は転倒など失敗の最多要因はヒューマンエラーだった。インターフェースのソフトで人のミスを排除できずロボットは倒れた」  ―AIはディープラーニング(深層学習)の画像識別率で人間を超えましたね。  「クラウドロボティクスと深層学習を組み合わせ、ロボットは視覚を手に入れたといえる。センサーやカメラで捉えた対象が何か、初めて人並みに認識できるようになった。カンブリア紀の生物は視覚を獲得し、多様性が一気に広がった。このカンブリア爆発がロボットでも起ころうとしている。AIやロボットは現実世界のモノを見て、手に取り学ぶ段階にある。自身の動作の結果を予測して、行動を計画できるかが次の焦点だろう」 (聞き手=小寺貴之) 

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