さあ、GW突入!お気に入りのバイクを「ブンブン」させツーリングへ

「レーサー体験」、「復活」、「鎧兜」~高級モデル続々にファン熱狂

ホンダモトGP参戦マシンをベースにした市販用のプロトタイプ

 国内2輪車メーカー各社が今年、技術の粋を集めた高級モデルを相次いで打ち出している。今は数で世界を席巻する日本勢だが、コミューターが中心の新興国市場でも大型バイクを好むユーザーはおり、市場は少しずつ変わっていく。憧れの車をつくり、将来に向けてブランドに磨きをかける。  【ホンダ/極限の軽さを追求】  選ばれた一握りのレーサーだけが体験していた異次元の運転感覚―。ホンダは2015年内にも2輪車の最高峰レース「モトGP」参戦マシンをベースにした公道走行モデルの発売を目指す。世間で“2000万円”と噂(うわさ)されるバイクだ。同社は価格を明らかにしていないが、騒音やライトなど公道走行への対応以外は参戦マシンをほぼ踏襲し、手作りに近い製造工程となるため、非常に高価になることは間違いない。  同社担当者は「極限の軽さを追求する。ライダーの意思に素直に応じる感覚は普通のライダーは感じたことのない領域になる」と語る。参戦マシンは排気量1000ccで、同じ排気量の「CBR1000RR」よりも約14%軽量な160キログラム。この軽さによって最大時速350キロメートルを出し、最大出力は2倍となる。  2輪の世界シェアでトップのホンダだが、「夢を追いかけるホンダを体現できていない危機感がある」(同担当者)。最高峰のレース技術で挑戦する姿勢を示す。    【ヤマハ/ホイールに技術者の誇り】  ヤマハ発動機が3月に欧州を皮切りに発売したスーパースポーツモデル「YZF―R1」。独特なエッジ断面デザインのホイールは、市販車の大型車向けでは世界初となるマグネシウム鋳造で製造した。スポーク部に小さく刻まれた「MORIMACHI○JAPAN」の文字に、開発者の情熱と誇りが宿る。  MORIMACHIはマグネホイールを開発、製造した森町工場(静岡県森町)、○は日の丸を表す。マグネシウムは比重がアルミニウムの約3分の2と軽い。レース車向けは鍛造からの削り出しで時間もコストもかけ加工しているが、市販車向けは鋳造でないと採算が合わない。だが、マグネシウムはさびやすく燃えやすく、アルミより低温で固まってしまうため、鋳造での製造は極めて難しい。  ヤマハ発でのマグネ部品の開発は一時、終了の危機に陥っていた。リアフレームを実用化後、07年にホイールの試作型までできていたが、08年のリーマン・ショックで開発が事実上、凍結。11年に試作型の保管期限が迫り、廃棄用のトラックまで手配された。  しかし土壇場で、R1開発のプロジェクトリーダーが「待った」をかけた。「軽量化技術もやり尽くして頭打ち。劇的に変えるにはマグネしかない」(尾上知輝PFユニット技術部ホイールグループ主事)。11年、「ノーエクスキューズ(言い訳無用)」の号令のもと挑戦が始まった。  「画期的な生産技術革新というより鋳造技術を最適化する地道な努力だった」と、塚本健二エンジンユニットクランクグループ主事は振り返る。課題はマグネの溶湯を鋳型の中にいかにまんべんなく行き渡らせるか。試作型で20回程度、量産型で10回以上の試験を行い、きめ細かい条件設定と鋳造解析を重ね、成熟度を高めていった。  ついに完成したマグネホイールは、フロントで約500グラム、リアで約300グラムの量化に成功。実験ライダーからも「操縦安定性が高く、別次元の走り」と高評価を得た。「今後はコスト低減が課題」(尾上主事)と挑戦は続く。    【川重/「H2」復活、ファン熱狂】  欧米などで14年12月に受注を始めた川崎重工業の旗艦モデル「ニンジャH2」は想定を上回る人気で、2―3カ月で一時受注を停止した。現在は増産体制を整え、地域によって受注を再開。近く日本でもレース用車両の「同H2R」を発売する。欧州でのH2の価格は税込みで2万5000ユーロ(約325万円)、H2Rは5万ユーロ(約650万円)と高価だが、それでも売れるのは70年代に“じゃじゃ馬”と評された「H2マッハIV(日本名:750SSマッハIV)」の強烈な加速を最先端技術で復活させたところにある。  「全力で開発したらどんなものができるか、やってみたい」。H2の開発時、開発陣からこんな声が上がっていた。この言葉通り、H2とH2Rには2輪部門だけでなく、川崎重工の各部門の技術が結集している。  核は強烈な加速を実現したスーパーチャージャー(過給器の一種)付きのエンジンだ。もともと低燃費技術として開発を始めたものだが、応用すると出力を上げることができる。排気量998ccながら、ラムエアシステムで走行風を取り込んで出力を増幅した時のH2Rは326馬力を発揮する。  過給器にはガスタービン・機械カンパニーの技術、過給圧を上げた時に起きるノッキングの防止にも同カンパニーのノウハウが詰まっている。またレースほどの高速で走ると車体の前方が浮く。そこでH2Rには航空機の羽を逆さまにした形状のウィング2組を取り付け、車体を下に押しつける力が発生するように設計した。  この最新技術の詰まった車体を、黒地に薄く銀の膜を重ねたような銀鏡塗装が包む。角度によっては真っ黒にも、逆に鏡のようにも見える。 これも量産車に初めて採用した技術だ。「ほんの小さな傷も目立ってしまうため、組み立て工程では選抜された従業員が専用の手袋を付けて作業する」(小林直人モーターサイクル&エンジンカンパニー渉外担当部長)。一つひとつの技が熱狂的なファンを惹きつける。    【スズキ/ハヤブサ国内投入】  スズキは、鎧兜(よろいかぶと)をモチーフにした個性的なデザインで国内外に熱烈なファンを持つ大型スポーツバイク「隼(ハヤブサ)=写真」を14年1月に国内に投入した。ハヤブサはそれまで輸出専用モデルで、逆輸入車として国内で販売されていた。99年の発売以来、国内での累計販売台数(逆輸入含む)は約2万2000台。日本仕様の発売を決めたのは、スズキ2輪車のブランド向上と国内市場の活性化が狙い。「ハヤブサが日本で改めて注目された」(スズキ広報部)と手応えを感じている。

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