ニュースイッチ

ベールを脱いだ次世代音声アシスタント「Viv」の実力

スマホに話しかけるだけで送金から物品購入、ホテル予約などスムーズに
ベールを脱いだ次世代音声アシスタント「Viv」の実力

Vivのウェブサイト

 アップルのSiri(シリ)の開発者らが、新会社で新しい音声アシスタント「Viv(ビブ)」を開発中であることはこの間お伝えしたが、9日にニューヨークで開催されたスタートアップイベント「テッククランチ・ディスラプトNY」で、そのVivがデモ公開された。Siriの開発者でVivの共同創業者でもあるダグ・キトラウス氏が登壇して行った20分のデモでは、お金を送金したり、花を購入したり、ホテルの部屋を予約したりといった行為を、スマートフォンに話しかけるだけで、きわめてスムーズに実行してみせた。スマートフォンの次のインターフェースになる日は近いかもしれない。

 キトラウス氏がまずデモしたのが、お天気関連の質問。天気予報サービスの会社と連動しながら、ちょっと複雑な質問を繰り出した。

 「3つ前の木曜日にシアトルでは雨が降っていたの?」
 -はい、4月21日の木曜日には雨が降っていました。
 「あさっての午後5時以降、ゴールデンゲートブリッジの近くでは70度(約21℃)より気温は高くなりそう?」
 -いいえ、水曜日の午後5時以降はそれほど気温が上がりません。

 いずれも答えはテキストベースで画面に表示されるが、音声の質問に対するVivの認識および回答はきわめて良好で、つっかえるところはない。

 その利点は音声認識だけでなく、Siriに比べてはるかにオープンであること。Siriの場合、わずかなタスクしか実行できないため、多くの場合、検索画面が示される。それに対し、Vivは機能的にアマゾンの「Alexa(アレクサ)」に近く、サードパーティーのアプリと連動して、自然な会話で物品やサービスを購入したり予約したりできる。

 さらに、「アダムに夕べの飲み代の20ドルを送金して」という要求では、10秒もかからずに送金を実行。「ママに誕生日の花を贈って」という依頼には、さまざまな花が値段とともに表示され、そこで「チューリップは?」と聞くと、何種類かのチューリップの花束が画面に出てきて、そのうちから選んで送ることができた。

 次に、試したのが「レイバーデーの週末にパームスプリングス近くのホテルで良い部屋を取ってほしい」というもの。ホテル予約サイトのHotels.comにつながり、ホテルの選択肢が表示され、そのうちデラックスルームを音声で予約。あまりの簡単さに会場からは拍手がわいたほどだ。

 もちろん、ウーバーで車を呼ぶこともできる。「自分の事務所からマディソンスクエアガーデンまで6人乗せていってほしい」と話し、地図に表示された車からSUVを選ぶと、しばらくして運転手から「4分で到着します」とのメッセージが。さすがにすぐキャンセルしたが、これは便利な機能かもしれない。

 実はこうしたVivを支える基盤技術が「ダイナミック・プログラム・ジェネレーション(動的プログラム生成)」というもの。Vivが言葉でのリクエストを理解しながら、その要望に応じるため、ダイナミックにプログラムを生成する機能だという。特許出願中だ。デベロッパーはこれを使って、サービスのための会話ユーザーインターフェースを作り上げることができるという。

 キトラウス氏はデモの中で、「いま見せたのは、世界が向かおうとしているほんの一場面。数十万のデベロッパーがこのような新しいサービスに接続し、会話での物品購入(カンバセーショナル・コマース)が簡単に行えるようになることを想像してみてほしい。これは始まりに過ぎない」。こう胸を張り、Vivは消費者にとって、全てのモノに対するインテリジェントなインターフェースとなり、デベロッパーには、コンテンツ、物品、サービスを提供する次世代の市場や販路となるとした。

ニュースイッチオリジナル
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
テッククランチによれば、会場では以前報道されたグーグルやフェイスブックなどによる買収の可能性について質問があったが、キトラウス氏は受け流したという。このデモで投資家や大手IT企業はかなり色めき立っただろうし、今後、同社を巡って買収合戦が巻き起こりそうだ。

編集部のおすすめ