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退職後も生きがいを!中小企業も目指せ「健康経営」

政府協議会の行動計画出そろう
退職後も生きがいを!中小企業も目指せ「健康経営」

つくろぎながら計測できるスペースを設けた(大森機械工業)

 政府の次世代ヘルスケア産業協議会の2016年版アクションプラン(行動計画)が、ほぼ出そろった。健康増進サービス「ヘルスツーリズム」の認証制度を16年度に開始。従業員の健康増進を経営上の課題として扱う「健康経営」も、中小規模の企業や医療法人を対象とした優良法人認定制度を16年度に運用を始める。経済産業省と厚生労働省、日本医師会(日医)との連携が着実に進む中、企業はこうした動きを様子見せず、積極的に関与、活用するのが得策だ。

2つの部会が政策案


 同協議会は現在、新事業創出WG(作業部会)と健康投資WGの二つのWGから成る。新事業創出WGは元気な身体を可能な限り長く保ち、退職後も生きがいややりがいを持って生きられる“生涯現役”目指す方策を検討。3月31日にとりまとめを終えた。温泉や自然などの観光資源を組み合わせた健康増進サービス「ヘルスツーリズム」の品質認証制度や、ヘルスケアサービスを事業化するための支援人材を育成し、「ヘルスケア・アクセラレーター・ビレッジ」として集積、登録を始める点を掲げた。

 健康投資WGは退職後に生きがいややりがいを突然なくし、身体や心理的なバランスを崩さないよう、現役時代から健康増進に取り組む方策を検討。4月7日にとりまとめを終えた。目玉は中小企業にも健康経営の認定制度を導入することや、企業と連携した糖尿病重症化予防実証。

 健康経営の優れた取り組みをする企業を選定する制度には14年度に始めた健康経営銘柄がある。だが、これは東京証券取引所上場の企業が対象で、非上場の中堅・中小企業は蚊帳の外だった。そのため16年度には「健康経営優良法人認定制度」の運用開始を掲げた。日本政策投資銀行から健康経営格付けを受けた大森機械工業(埼玉県越谷市)など、健康経営の取り組みに優れた中堅・中小企業は全国に多い。「健康経営銘柄の説明会は大入り。中小企業の皆さんも来ている」(経済産業省ヘルスケア産業課)というほど関心が高まった。

 また、糖尿病重症化予防実証も力を注ぐテーマの一つ。糖尿病診断の代表的な指標であるHbA1cの値が6・5以上の患者を対象に数百人規模で企業と連携して実施する。

透ける“本気度”


 二つのWGのまとめを受け、22日に開く協議会で「アクションプラン16」を策定。成長戦略改定に盛り込み、17年度予算の概算要求の基礎とする考え。

 13年に始めた同協議会で最近の大きな変化は経産省と厚労省、日医の連携が強まっている点だ。データヘルスの普及で経産省と厚労省の連携は進んだが15年後半から日医が同協議会WGに参加。当初、日医をはじめとする医療専門職には「経産省は変わったヘルスケア企業ばかり持ってくる」(同)と映り、「ならば日医に入ってもらおう」(同)という動きが現実になった。それだけ政府の動きは”今度は本気“と取れる。企業はこの変化を意識しておく必要がある。
(文=米今真一郎)
日刊工業新聞2016年4月19日 ヘルスケア面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
1980年代に米国で提唱されたヘルシーカンパニーという思想は、「健康な従業員こそが収益性の高い会社を作る」というもの。確かに、その通りですが、日本ではこの概念を一歩進め、企業経営と従業員の健康管理を両立させる狙いで「健康経営」との考え方が生まれたとのことです。                          

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