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熊本県内の中小メーカーは今。工場「めちゃくちゃ」

復旧の道のり厳しく。行政の支援策を強く要望
熊本県内の中小メーカーは今。工場「めちゃくちゃ」

半導体、液晶、自動車関連製品メーカーのプレシードでは棚などが倒れた(熊本県嘉島町、同社提供=15日)

 巨大地震が熊本、大分両県を中心とする産業集積地を襲った。熊本県内では、生産設備の倒壊などで企業に大きな被害がでている。直接的な被害を免れた企業でも、高速道路の不通などでサプライチェーンへの影響が発生している。両県を中心に中堅・中小企業の被災状況を探った。

「総合鉄工団地」復旧計画振り出しに


 16日未明の震度6強の大きな揺れの後も余震が続いている。熊本市東区の「総合鉄工団地」には金属加工やメッキ加工などの中小企業8社が集まっている。

 メッキ加工を手がける熊防メタルは事務所の外壁がはがれ落ち、工場の窓ガラスが窓枠ごと落ちてガラスが砕け散った。前田博明社長は「大きな揺れと余震でラインのクレーンがメッキ槽に落ちた。メッキ剤が跳ね上がり混ざり合ってしまった。溶剤を安全に処理するため業界団体に応援を依頼した。月曜日から復旧にかかる。しかし交通事情が悪く身動きが取れない」と心配する。

 団地の関係者は14日夜の地震からの復旧活動を16、17日の土日に計画していたと口をそろえる。しかし16日未明の揺れとその後も続く余震ですべて振り出しに戻った。同社の前田義則総務部長は「復旧計画を立てたばかりで大揺れが来た。自宅も大変なことになっている」とつぶやいた。

 市内にある別の金属加工会社では天井が抜け落ち、割れた窓ガラスや多くの金属部品が床に散乱し、プレス機が倒れた。同社の社長は「従業員と家族のためにも廃業はできない。行政には復旧のための補助金など、製造業復興を目指した施策の実施を求める。しかしこの状況では復旧は簡単ではない」と途方に暮れる。

 また事務所ビルの窓ガラスや外壁が崩れ落ちたサッシメーカーの社長は「工場の中がめちゃくちゃ。今の段階では今後のことはわからない」と肩を落とした。

取引先の大手からエンジニア確保の依頼


 半導体製造装置関連メーカーのサンワハイテック(菊池市)の山下義隆常務は「2度目の大揺れで工場内は相当散らかった。工作機械は設置場所から動いた。片付けに2、3日かかる。設計や組み立てのスペースは早急に確保する。余震が続いているので、復旧は時間がかかるだろう。取引先の大手企業から装置立ち上げのためのエンジニア確保の依頼があったので準備を始めた」と話す。

 環境関連商品を製造している日本リモナイト(阿蘇市)の辻誠販売企画部次長は「土砂崩れや橋の崩落で交通網が分断されている。熊本市内の営業所から阿蘇に入ることができない」と心配する。また「現地からの情報で研究施設は大丈夫のようだ。現在は水や食料など物資が足りない状況で配給に頼っている。まずはそっちが先だ」と訴える。

 松木運輸(八代市)の松木喜一社長は「余震が続いており敷地内で液状化現象が出ている。各所で道路が分断されており物流に影響が出ている。陸上運送では時間帯のよって大渋滞に巻き込まれている。復旧がいつになるか読めないことが心配だ。復旧時には道路や岸壁の耐震化を強くお願いする」と強調する。
(文=熊本支局長・勝谷聡、大分支局長・広木竜彦、福沢尚季)
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日刊工業新聞2016年4月18日「深層断面」
中島賢一
中島賢一 Nakajima Kenichi
熊本出身の私としては心が痛みます。地震が直撃した地域だけでなく、関連する産業が立地する地域も経済的打撃が生じています。日本全体で再生に向けた活動をしていく必要がありますので、身近なところからできることをしていきたいです。

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