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半導体、放熱材料で新技術相次ぐ

高温化するパワーデバイス。日立化成、熱伝導率を高めた接着シート
半導体、放熱材料で新技術相次ぐ

日立化成の高熱伝導絶縁接着シート

 日立化成は電力用半導体素子(パワーデバイス)向けに放熱材料を拡充する。熱伝導率を従来品に比べ67%高めた接着シートを投入。また2017年にも、同シートを金属板と銅箔で挟んだ構造の回路基板や、実装時に使う焼結金属ペーストを量産する。基板など放熱材料の世界市場は400億―500億円とされ、今後5年でもう一段の伸びが見込まれる。同社は基板の大電流・小型化ニーズを捉え、20年に世界シェア10%を狙う。

 電子部品の熱を効果的に逃がす絶縁性接着シート「ハイセット」に、熱伝導率を20ワット/メートル・ケルビンに引き上げた製品を追加する。独自の樹脂や硬化剤、フィラーの充填技術などを活用し、自動車向けにも対応できる高い放熱性能を持たせた。

 数量面で主流の6―7ワット/メートル・ケルビンの製品と合わせて充実した品ぞろえを訴求し、幅広い用途に対応できる体制を整える。

 また、ベースとなる金属板に絶縁性接着シートを貼り、銅箔を重ねた超厚銅基板も開発した。20ワット/メートル・ケルビンの高い熱伝導率を持つ。従来はエッチング液で銅箔を溶かすため断面が台形になるが、ほぼ垂直に削れる。このため、従来手法より回路の面積を小さくできるほか、断面積が大きくなり許容電流を増やせる。セラミックス基板からの置き換えも視野に入れる。

 さらに、高温で稼働する炭化ケイ素(SiC)のパワーデバイス用に、銅粒子と金属合金の粒子で構成した金属ペーストも開発した。鉛フリーハンダと同等の温度で焼結し、高温環境下でも再融解しない。無加圧で接合できる。

現在、超厚銅基板と金属ペーストはユーザーが評価の段階にあり、下館事業所(茨城県筑西市)などでの量産や検査設備への投資も検討する。
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京セラは放熱に適した基板材料


日刊工業新聞2016年1月6日


 京セラは炭化ケイ素(SiC)によるパワー半導体の放熱に適した基板材料(写真)を開発し、一部量産を始めた。薄いセラミックス基板の両面に銅を厚く接合したことで、従来製品より放熱性能を約70%改善した。同社は電力を変換するパワーモジュールのメーカーなどへ売り込む。

 開発したのは厚銅貼りセラミックス部品「AtsuDo」。従来のシリコン半導体よりも耐熱性能が高いSiC半導体などへの使用に適している。絶縁のための窒化ケイ素に銅を貼り合わせたもので、窒化ケイ素を0・32ミリメートルと従来の半分程度の厚さにすると同時に、銅は従来の0・3ミリメートルから1ミリ―1・5ミリメートルへと大幅に厚くすることに成功した。

 放熱基板は熱伝導率が高い銅を厚くすれば性能が高まるが、絶縁材料であるセラミックスとの熱膨張率が違うため限界があった。同社は曲げ強度に強い窒化ケイ素を採用するとともに、接合条件を最適化。銅の厚さを大幅に増した。

 放熱基板の性能が高まればSiC半導体に使えるだけでなく、熱対策のため分散実装していたパワー半導体も集積できる。このため、パワーモジュールの小型化にもつながる。
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日刊工業新聞2016年4月6日素材面
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
かつてパソコン用のMPUで目玉焼きが作れるという都市伝説があったように、半導体には熱問題がつきもの。パワー半導体ではより高熱に耐えられるSiCなど新材料が登場しているが、それだけ基板など周辺の部品や材料も熱さに耐えなければならない。

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