ニュースイッチ

「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(18)半世紀分の垢

旅客システム刷新目指す。自社の閉じた世界からクラウド型へ社内情報もオープンに
 日本航空(JAL)は2017年末に、航空会社の基幹システムである旅客システムを刷新する。航空券の予約や発券、搭乗管理をつかさどる旅客システムは航空会社の屋台骨。自社で構築、運用する現行のシステムは69年に稼働、すでに45年以上が経過した。刷新を機に、海外のベンダーが提供するクラウドサービスを導入して旅客システムをオープン化する。

 JALが採用するのは、スペインのアマデウス社のクラウドサービス「アルテア」。アルテアは130の航空会社が導入する世界最大の旅客システム。JALが加盟する航空連合「ワンワールド」でも、15社のうち9社がアルテアを使用しており、システム連動などの面で優位性が高い。

 現行のシステムを17年まで使い続ければ、ほぼ半世紀も同じシステムを使い続けることになる。旅客システムは以前から経営課題であり、これまでにも幾度となく、刷新を前提に予備調査を行ってきた。しかし赤字と黒字を交互に繰り返す不安定な経営環境の中で投資の決断ができず、断念した歴史がある。

 資金だけでなく、人的にも問題があった。旅客システム推進部システム刷新推進室長の新谷浩一は「旅客システムを刷新すれば、3万2000人の全社員が何らかの形で関わる。1万人以上が新たなシステムに習熟するには、7―8カ月かかる。経営破たん前はその余裕がなかった」と話す。

 経営破たんを経て、旅客システム刷新の方針が決まると、11年4月から予備調査を開始。14年6月にアルテアの採用を決定するまでに3年以上がかかった。現在は、新谷を中心にアマデウスとの仕様の確定や、アルテアと接続する新たな基盤の開発、開発が済んだ部分のテストなどを進めている。16年からは各事業部門と業務プロセスを検討し、落とし込んでいく作業に入る予定だ。

 目下の課題は計画通り、17年末に新システムを導入できるかだ。新谷は「後から問題が発覚すると、開発が済んだ部分もやり直す必要が出てくる。これを避けるためには、情報の共有が肝になる」と話す。
 新谷はプロジェクトを進める中で、スタッフ間の「見える化」を徹底する。先端システムの構築には、意外にもアナログな「ホウレンソウ」がカギを握っている。(敬称略)
日刊工業新聞2015年04月02日 建設・エネルギー・生活面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
システムの更新によって、業務プロセスが変わります。航空会社の基幹システムである旅客システムは、関わる社員の数が多いため、影響が大きく、更新にも時間がかかります。

編集部のおすすめ