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元ソニー社員が著書から語る凋落の根本的原因とは?

経営コンサルタント・原田節雄氏「アイデアを商品にするのではなく技術を商品に」
 ―執筆の動機は。
 「一番の原因はソニーの凋落(ちょうらく)だ。問題は経営者のかじ取りに起因するのだが、かじ取りの間違いの根本原因を指摘している人が世の中にいなかった。それを書くことで、日本の経営者の役に立ちたいという思いからだった」
 
 ―一般的なビジネス書とは一線を画す異色の経営本です。
 「事例を積み重ねても仕方ない。事例は自分で経験していくもの。自分の中で積み上がれば、本質が時間とともに見えてくる。ただ、他社の事例を集めても本質は見えてこない。何が起きたか真実が書かれていないからだ。私の経験から原理原則から説明すれば、読む人が読めば理解できると思って執筆した」
 
 ―今の経営者に見る問題点は何でしょうか。
 「多くの経営者は現象を追っている。中国が何かしたら、日本も何かしないといけないと。火事と同じで消しているだけではダメで、防火が必要だ。ただ、防火だけやっても、実際に自分の家が燃えているのには対応できない。防火と消火をバランス良くやらないといけない。防火が本質で消火が現象だが、日本の経営者は消火ばかりに走っている。『本質を見抜け』『本質と現象にバランス良く対応しろ』と言いたい」
 
 「アイデアを商品にすると言う経営者がいるが、それは間違いだ。技術を商品にしないといけない。コメづくりは農作の技術があるだけでアイデアはない。モノづくりなら工業の技術がある。技術があって初めて食べていける。それを忘れている経営者が多い」
 
 ―日本の技術力はまだグローバル競争で優位ですか。
 「技術やモノづくりを勘違いしている人が多い。中国でやっているのはモノづくりではなく、安い労賃を金に換えている金づくりだ。東レやブリヂストンが行っている基礎的な開発こそがモノづくりだ。昔で言えば、真空管を半導体に換えたのがモノづくりだ。半導体がLSI(大規模集積回路)に換わったのもそうだ。部品を集めてこねくり回すのがモノづくりではない」
(聞き手=鈴木岳志)
 
 【著者プロフィール】経営コンサルタント・原田節雄(はらだ・せつお)
1966年(昭41)山口県立防府高校卒。さまざまな職を経て、70年にソニーサービス入社。86年にソニーへ転籍。現在は経営コンサルタントのほかに、桜美林大学大学院特任教授や日本規格協会技術顧問などを務める。山口県出身、67歳。

『本質と現象の両輪経営戦略 ヒト・モノ・カネを活用する!』(日本規格協会刊)
 
日刊工業新聞2015年04月27日 books面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
出井さんはアイデア先行だった。ストリンガーはエレクトロニクス事業の本質を見抜けたかった。いや見ようとしなかった。エンタメの人なので。今の平井さんは、そろそろ消火作業を終えないといけない。

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