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「シルバーウイークを地域ごとに分散すれば閑散期は減る」(星野リゾート社長)

星野佳路氏インタビュー。インバウンド施策は打てば響くが国内は地味
 政府が訪日外国人旅行者(インバウンド)の2020年目標を4000万人に再設定するなど、外国人観光客を拡大させる政策に力を入れる一方、日本人の国内旅行消費は縮小の一途だ。旅館再生などで知られる星野リゾートは7月に東京・大手町に、都心で初めて「星のや東京」を開業するなど施設を拡大している。星野佳路社長は消費縮小の歯止め策として「休日を地域で分けて取得する」ことなどを提言する。成長戦略をどう描くのか、星野社長に聞いた。

 ―国内の旅行市場をどうみていますか。
 「日本人の国内旅行消費額は最新の14年度が前年比8・1%減の18兆5000億円。しかも訪日外国人は東京・大阪など一部の大都市に集中しているので、地方から見れば、インバウンドも来ないし、日本人も減っているという状況だ。観光は地方の基幹産業であり、雇用の担い手でもある。日本人による国内旅行の市場をどう維持するか、政策が必要だ」

 ―国内の観光を盛り上げるアイデアはありますか。
 「休日の分散を提言している。シルバーウイークを制度化して、休日を地域で分けて取得する。需要を分散することで、観光業界は閑散期がなくなる。観光業界の人材は、非正規雇用が約75%を占めている。閑散期がなくなれば、設備投資もしやすくなるし、いい循環を生み出せる。観光業の生産性を上げるには、休日の分散化が最も効果的だ」

 ―政策がインバウンドに偏っているのはなぜでしょうか。
 「インバウンドは施策を打てば響く。合意形成も比較的容易で、賛否両論と言う状況になりにくい。一方、国内は地味な活動になりがちなので、インバウンドに力が入るのは仕方がない」

 ―星野リゾートトマムを中国の投資ファンドに売却しましたが、その意図は。
 「星野リゾートは運営に特化する戦略をとっているので、建物を所有しないのがスタンスだ。オーナーの投資ファンドとは将来のビジョンも共有している。赤字だったトマムをこれまでに約60億円を投資して黒字にもってきたが、まだ海外のスキーリゾートに比べ、機能が劣る。オーナーも理解しているので、今秋からさらに投資を拡大し、競争力を高めたい」

 ―間もなく星のや東京が開業します。
 「建物が3月に完成し、ここまでスケジュール通り来ている。総支配人も着任し、準備も順調に進んでいる」

【記者の目・投資家と二人三脚】
 トマムの売却は中国企業に北海道のスキーリゾートが乗っ取られたという見方で、注目を集めた。だが、運営に特化している星野リゾートにとって重要なのは、施設への投資を惜しまない投資家と組むこと。今後はオーナーと二人三脚で、トマムを世界有数のスキーリゾートにリニューアルしたい考え。星野社長の手腕が発揮されそうだ。
(聞き手=高屋優理)
日刊工業新聞2016年4月6日生活面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
休日の分散化は、以前から議論がありますが、なかなか進みせん。反対意見でよくあるのは、地方に住む両親と都会に住む子どもの休みがバラバラだと会えない、というものなのですが、星野社長は、シルバーウィークのみを分散化することを提案しています。正月やゴールデンウィークは全国的な休日で、シルバーウィークは、地域ごとに休む。テーマパークの混雑も平準化できそうですし、試験的にやってみてほしいなと、思います。

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