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サッポロ「黒ラベル」21年ぶり年販プラス、30代取り込む

サッポロ「黒ラベル」21年ぶり年販プラス、30代取り込む

全国各地で体験イベントなどを開催した

 ビール業界で新ブランドのビールや派生商品登場が相次ぐ中、サッポロビールの老舗ビールブランド「黒ラベル」が元気だ。2015年の販売数量は前年比0・2%増の1618万ケース(1ケースは大瓶20本換算)と実に21年ぶりプラス、16年も足元は同約5%増と好調が続く。好調の背景は30代後半の新しい客層を取り込んだことと“体験戦略”。有名タレントを起用した大量宣伝手法が多い中、黒ラベル好調は他社にとってもマーケティングのヒントになりそうだ。

30代の背伸び志向にマッチ


15年、サッポロビールは黒ラベルと「ヱビス」の2大ブランドのうち、明らかにヱビスに軸足を置いていた。黒ラベルは業務店で生ビールをゴクゴク飲むイメージ。これに対して、ヱビスはプレミアムビールの位置づけ。プレミアムに各社が力を入れた当時の情勢からも、この方が正解と思えたからだ。結果的には黒ラベルのプラスに対してヱビスは1・2%減とマイナス。数量も黒ラベルの1618万ケースに比べ、ヱビスは952万ケースだった。

 黒ラベルが上向いた理由で、川口尚宏ブランド戦略部長は「30代の需要を取り込んだことと、露出の拡大」を挙げる。国内ビールユーザーの主力は、今や中高年。若い世代は安価な第3のビールや果実系の缶チューハイに流れ、ビールを選ぶ割合が減っている。

 とはいえ20代から30代へと年齢が増すにつれ、会社で飲む機会の影響からか、ビールを選ぶ率が高まるという。若者からちょっと背伸びした、大人の世界の飲み物というイメージ。それに「黒ラベルのPR戦略が奏功した」と語る。キャッチコピーも「大人へのエレベーター」など“背伸び志向”を強調した。

「生ビール」ではなく「黒ラベル」


 加えてブランド名の露出戦略だ。一般的なビールが業務店向けと一般向けの比率がほぼ半々なのに対し、黒ラベルは業務店が3分の2と高い。ただ業務店ではメニューに“生ビール”と表示されるだけで、黒ラベルブランドの表示は少なかったという。それを営業努力で1軒1軒お願いし、黒ラベルと表示してもらうことに。露出機会が増えたことにより、店で飲んだ客がコンビニエンスストアやスーパーでも黒ラベルを選ぶようになり、数量が伸びたと見ている。

西日本で体験会 


 大阪をはじめ、西日本地区で体験イベントや期間限定店を開催したことも見逃せない。サッポロの販売はもともと、北海道や東日本が中心。西日本の知名度は弱かった。体験イベントを開いたことで客が黒ラベルの味、商品名を覚えてくれるようになり、スーパーや業務店から黒ラベルを扱いたいと問い合わせが増えた。

 3月23日にはアサヒビールが新ブランドのビール「ザ・ドリーム」、サントリービールも「香るエール」などを投入したが、影響は軽微という。16年は前年比3・2%増、1670万ケースの販売を目指す。
(文=編集委員・嶋田歩)
日刊工業新聞2016年4月5日 建設・エネルギー・生活2面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
たしかに妻夫木聡さんが大人へのエレベーターで先輩に会いに行く演出のCMは印象的です。サッポロビールさん、今後は「サッポロクラシック」をもっと本州でも拡販してください。全力で買います。

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