ニュースイッチ

安価な日本製で勝負!ジェネリック医療機器でアフリカを開拓するベンチャー

レキオ・パワー・テクノロジー(那覇市)が展開
安価な日本製で勝負!ジェネリック医療機器でアフリカを開拓するベンチャー

海外販売を加速する低価格の生体用超音波スキャナー「US―304」。手前が体にあてるプローブ

 レキオ・パワー・テクノロジー(那覇市、河村哲社長、098・868・9500)は、低価格の生体用超音波スキャナー「US―304」の輸出を拡大する。ケニアで医療機器認証を取得、50台を出荷した。実証事業以外の輸出は初めて。さらにアフリカ各国で認証や販売を広げ、中南米のキューバで採用を狙う。

 3月にケニアの代理店に販売した。同代理店が担当するソマリアでの需要開拓にもつなげる。営業は現地代理店を通じて展開するほか自社でも拡販する。アフリカではエチオピア、タンザニアにも営業をかける。キューバでは医師養成政策に関連した導入を見込み、2016年内に販売を実現する構え。

 同スキャナーは特許切れ技術を用いた「ジェネリック医療機器」。1台約1500ドルの低価格と日本製を強みに、途上国を中心に普及を見込む。これまで国際協力機構(JICA)の事業を通じて、スーダンで助産師向け実証を行ってきた。同国での正式導入に向けても取り組む。

 海外展開に関して沖縄振興開発金融公庫から資本性ローン5000万円の融資を受けた。2016年12月期の売上高は2億円を目指している。


河村社長は大手素材メーカー、コンサルを経て起業。日本の技術を「使って残す」


(日刊工業新聞2016年2月22日 中小・ベンチャー・中小政策面 連載「日本の未来企業」)
 
 ジェネリック医療機器を世界へ―。レキオ・パワー・テクノロジーは、低価格の生体用超音波スキャナーを沖縄で製造販売する。有望市場はアフリカ大陸など途上国。スーダン共和国で市場を広げるほか、数カ国で展開を視野に入れる。社長の河村哲は「大企業と違い、製品を欲しい人に最低の金額で届けられる」と強みを語る。

 同社は電磁誘導コイルの開発製造のため2011年11月に設立。現在は特許切れのエコー技術を使うスキャナー「US―304」が主力だ。低価格帯の大手メーカー品と比べて約5分の1の価格。途上国でも大量に導入でき、基礎医療のレベルを上げられる。ネットワーク化による遠隔診断も可能とにらむ。

 河村は沖縄に地縁はない。だが前職を退職する3日前に東日本大震災が発生。放射線の心配が大きかった東京から離れるため、退職直後に家族と沖縄へ。

指示された開発にもやもや感


 72年生まれ。京都大学工学部、同大学院へ進み、住友ベークライトに入社。研究所でフェノール樹脂製品の開発チームをまとめ、絶縁材「スミコンPM9630」を完成させた。しかし車載電装品担当に移ると一変。最適な処方を自ら探す開発から「指示された仕様を仕上げる」開発がメーンになった。

 もやもや感を覚え、自己啓発本を読みあさる。そして堀紘一氏の著作に出会う。それを機に33歳で同氏のコンサルティング会社、ドリームインキュベータへ転職。技術系企業のM&A(合併・買収)や再生を手がけた。だが40歳を前に上司と反りが合わず退職。沖縄に住むことになる。

 河村は技術者時代を「穴を掘り進めていた」と表現する。やりがいはあったが「技術を真下に深め、穴から見えるのは顔を出した範囲」。しかしコンサルは「高い所から広く世界が見えた」。

 この視点は事業モデルに生きる。US―304はコア技術や周辺部品も国内メーカーに製造委託している。基本的に技術を抱えず、参入する製品市場に合わせて「必要な技術をピックアップ」する。

日本の技術「使って残す」


 他方、モノづくりの重要性も受け止める。「日本に残らなければいけない技術がある。それを株ではなく商流でやる」。日本の固有技術を“使う”ことで残そうとしている。河村は自らの道を歩む。「企業規模は身軽でいい。自分が面白くて社会の役に立つことをやっていく」。
(敬称略)

【企業プロフィル】
▽代表=河村哲氏▽住所=那覇市西1の20の13▽資本金=1550万円▽設立=11年(平23)11月
日刊工業新聞2016年3月31日 ヘルスケア面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
まず市場を見つけて、そこで売れる製品をつくっていくのが河村氏の事業スタイルです。

編集部のおすすめ