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黒潮海流発電を目指す!“タツノオトシゴ”という名の発電装置

沖縄科技大の研究チームが試作機を完成
黒潮海流発電を目指す!“タツノオトシゴ”という名の発電装置

海流発電装置(試作機)のえい航試験(沖縄科技大提供)

 沖縄科学技術大学院大学の白澤克年スタッフサイエンティストと新竹積教授は、浮体と重りでタービンの姿勢を安定させる海流発電装置を試作した。タービンを1機のみとし、簡易な構造のため保守・管理が容易。回転子であるローターの直径が2メートルの場合、1キロワットの出力が見込める。黒潮(日本海流)での利用を目標に、企業への技術移転を通じて早期実用化を目指す。

 装置全体を水中に沈め、ケーブルで海底につないで設置する。水深が深いほど波の影響を受けにくく安定する。船舶によるえい航試験では最高出力400ワットを記録した。理論上はギア比の調整により出力1キロワットで発電できる。

 国内メーカーなどが採用する双発式の海流発電装置は、並べたタービン2機がトルクを打ち消し合って姿勢が安定する。一方、今回の装置はタービンに付けた浮体と重りだけでタービンの故障時も姿勢を安定して維持できる。

 事業化の段階ではローターの直径が80メートルで、水深100メートルに複数を配置することを想定。流速1・5メートル毎秒の場合、1機当たりの出力は3000キロワットになると試算している。発電した電力に関しては、直流で送電するほか水素を製造して貯蔵する。

 同大学での研究は、2015年度で一区切りとなる。今後は、実用化を視野に入れ、技術移転先の企業を探す。
日刊工業新聞2016年3月29日 科学技術・大学面
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
開発中の名前は、その立ち姿(浮き姿?)から「Seahorse(タツノオトシゴ)」だったとか。 現在はローター直径2メートルで、事業化スケールの同80メートルには開きがあります。ただ、技術移転で海流以外の利用シーンが見つかれば、段階的にスケールアップしながら海流発電にたどりつくことも期待できます。

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