「東工大の黒い壁」が進化。契約電力が減ったのは太陽光を主力電源にした成果

大岡山キャンパスがスマートコミュニティーの起点に

壁面が太陽光パネルに覆われた東工大環境エネルギーイノベーション棟

 東京工業大学の大岡山キャンパス(東京都目黒区)は今冬、電力需要の上限値を2011年の契約電力と比べて約2400キロワット低減した。敷地内にビルを3棟増設しており、普通なら電力需要が増えて上限値も上昇するはず。太陽光発電を主力電源として構築したマイクログリッドと、ICTを駆使したエネルギー管理システムが電力需要を抑えた。  大岡山キャンパスの11年の契約電力は1万1376キロワットだった。13年には9408キロワット、さらに15年夏には9264キロワットに見直していた。今冬は契約電力を変えずに上限値の目標を8904キロワットに設定していた。  目標達成に威力を発揮したのが自家発電設備だ。12年2月完成の環境エネルギーイノベーション棟はビルそのものが“発電機”だ。7階建てビルの屋上や壁面に、びっしりと4570枚、出力650キロワット分の太陽光パネルが取り付けられている。  100キロワットの燃料電池も備えており、天候が良ければビルはエネルギーを自給自足できる。ビルで電力が余ると、他のビルにも電力を融通して電力需要をカットした。  15年春までに他のビルにもパネルを増設し、太陽光は合計1388キロワットに達した。さらに105キロワットのガス発電機、96キロワット時のリチウムイオン蓄電池も新設した。  ただし、導入した発電設備の能力を合計しても、2400キロワットの低減分に届かない。理工学研究科の伊原学教授は「エネスワローの制御が効いている」と説明する。  エネスワローとは、東工大が企業と共同開発したエネルギー管理システムだ。電力、気温、日射の情報を集めて電力需要を予測する機能を持ち、電力の使いすぎが見込まれると、ガス発電機、蓄電池の順で動かす指示を出す。それでも上限値を超えそうだと不快にならないように空調を順番で止めて節電する。  エネスワローは熱需要も判断材料にしている。燃料電池とガス発電機の排熱は回収してビルの空調に使っている。燃料電池は常に運転するが、ガス発電機は排熱の利用が最大になるように運転を制御し、省エネルギー化を追求している。  蓄電池には数分刻みで指示を出す。過去のデータを参考にエネスワローが数分先を予測し、充放電のタイミングを決める。充電量が96キロワット時と小規模でも、数分単位のぎりぎりで充放電を繰り返すことにより、蓄電池の能力を引き出している。  大岡山キャンパスは太陽光を主力とした自家発電設備で電力需要を低減した。さらにエネスワローの活用で、発電設備の能力以上の削減効果を生み出した。成果を街や地域へ広げればスマートコミュニティーに発展する。 (文=松木喬)

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