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「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(17)システム全刷新へ

社内で利害が対立「ANAが5人でやっていることを20人かけていた」という硬直性
「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(17)システム全刷新へ

航空機の運航では多くのシステムが動いている

 日本航空(JAL)は2012―16年度末までの中期経営計画で、ITシステムの全面刷新を掲げ、社内に複数のプロジェクトを走らせている。航空券の予約や発券などをつかさどる旅客システムを中心に運航や整備、貨物など約100のシステムを運用するが、経営不振で投資を抑制している間に経年劣化し、競争力を失っていた。20年までにすべてのシステムを刷新すべく、経営資源を投じ、遅れた時計の針を必死に巻き戻す。

 IT推進企画部生産系推進統括グループ長の足立有が「Big Ban」と題した企画書を手に企業再生支援機構の役員に直談判したのは、経営破たんから1カ月もたたない、10年2月12日。企画書には現状の問題点、対象分野、改善ポイント、競合他社の状況、業務刷新による効果、費用まで綿密に書き込まれている。

 足立が同部署の前身であるIT企画部に配属されたのは09年。「全日本空輸(ANA)が5人でやっていることをJALは20人かけていた。これではお話しにならない」。強い危機感を抱き、1年かけてシステム刷新の計画を練った。経営破たんで社内の雰囲気は沈んでいたが、足立は「企画を表に出せるチャンスだと思った」と話す。

 航空会社はいうなれば、システムの塊。旅客システムを中心に各システムとすべての業務プロセスが連動する。足立は機構の役員を前に、現状の問題点と刷新の必要性を切々と訴えた。機構の理解はすぐに得られ、プロジェクトは前に進んだものの、2年後に機構が引き上げると、業務改革などで他部門と利害が対立し、今度は社内の壁にぶつかった。

 硬直した組織で孤軍奮闘していた足立だが、12年3月にIT企画本部が新設されると、業務改革に対する社内の理解も広がった。現在は150人がシステム構築などに携わるが、刷新が完了したのは全体の4分の1。14年6月には、1月に稼働したばかりの航空機の重量管理システムが障害を起こし、約180便が欠航する事態が発生した。今後は年間2―3の新システムが稼働するため、こうしたリスクと常に背中合わせだ。足立は「目標にはほど遠い」と笑いながらも、「その一歩は踏み出せた」と前を向く。(敬称略)
日刊工業新聞2015年04月01日 建設・エネルギー・生活面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
最近、海外に行くとチェックインとかもかなりシステム化されているという印象を受ける。逆に人がいなくて戸惑うことも多いが、、ホスピタリティーとのバランスは難しい。

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