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「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(16)世界一への目線

「一つ上のものを」を合言葉に座席改革。スカイスイートは掟破りから生まれた
 「世界一の航空会社になるために、他の航空会社がやっていないことをやる」。日本航空(JAL)社長の植木義晴は2013年1月から国際線に導入した新仕様機材「スカイスイート」をJAL再生の象徴に位置づける。スカイスイートは座席数を15%減らし、ファーストクラスやビジネスクラスに座席が水平に倒れるフルフラットシートを導入。エコノミークラスは横1列の座席数を標準仕様から1席減らして間隔を広げた。座席を減らせば収入が減る。従来の航空会社の常識を覆す、JALの“おきて破り”は、経営破たんにより、会社が一度消えた苦い経験がもたらした。

 JALは10年の経営破たんの前後、業績低迷で投資どころではなかった。植木は「古いプロダクトで社員の力だけを頼りにやっていた」と振り返る。競合する全日本空輸(ANA)は、10年にフルフラットシートをビジネスクラスに導入し、資金力の差がサービスに現れ始めていた。
 商品・サービス企画本部開発部空港サービス・客室仕様サービスグループ長の藤島浩一郎は「経営破たんが、外部から客室やサービスの評価を受けるチャンスになった」と話す。客室やサービスなどの向上は、企業再生支援機構の指摘もあり、10年末頃から本格的な議論が始まった。

 議論の中で行き着いた新たなサービスのコンセプトは「差別化」。当時、国内線への参入が予想されていた格安航空会社(LCC)や大手航空会社といかに伍(ご)していくか。JALは「一つ上のものを」を合言葉に、ファーストやビジネスの上位クラスだけでなく、エコノミー席も差別化を意識してカスタマイズした。

 その象徴が、エコノミー席前面のモニターの左右にある携帯電話や出入国書類などを置けるホルダーだ。航空機の部材を採用するには一つひとつ当局の許可が要るため、部品を増やせば、それだけ時間やコストがかかる。

 空港サービス・客室仕様サービスグループの西垣淳太は「以前だったらリスクを取らないようになるべく簡素な座席にしていた」と話す。供給者目線から利用者目線へ―。スカイスイートは、コンセプトからモノづくりまで、JALの次なる方向性を決定づけた商品と言える。
 (敬称略)
日刊工業新聞2015年03月31日 建設・エネルギー・生活面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
自分は水分をよくとるので比較的トイレが近い。なので海外に行く国際線ではなるべく通路側にしてもらう。エコノミアンとしては、窓側や間の席だと隣の人に何回を立ってもらうのは申し訳ないからだ。でも時に通路側が埋まっている時がある。なんとかトイレ問題も解決してほしい。

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