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東京はIPOで香港やシンガポールを追い上げられるか。証券大手が支援充実へ

IPO部門に新たな業績評価軸や投資ファンドへの営業も
 大手証券各社は、IPO(新規株式公開)支援体制を相次ぎ充実させる。大和証券はIPO企業だけでなく投資ファンド向け営業にも力を入れる。SMBC日興証券は外部評価に基づく新たな評価軸をIPO部門に導入する方針。IPOで主幹事を獲得することは、顧客への魅力的な商品提供や企業との関係作りに役立つ。2016年も15年同様に約100件のIPOが見込まれるなか、各社は優良企業の発掘・支援を加速する。

 野村証券は、上場予備軍企業を発掘するため、全国の支店や野村リサーチ・アンド・アドバイザリー(東京都千代田区)と連携し、活動。16年もIPO全体の3割以上の主幹事獲得を見込み、業界トップを確立する。

 大和証券は上場予備軍企業だけでなく、企業に出資する投資ファンドへの営業も強化する。ファンド営業はこれまで兼務で担当することが多かったものの、専任社員を配置。海外経験や投資銀行業務に知見を持つプロフェッショナルを充てる。IPO企業のうち業界内で話題になるような企業、大規模な企業には投資ファンドが出資するケースが多い。より大規模なIPOで主幹事を獲得し、シェア向上を目指す。

 SMBC日興証券は、IPO部門に対し4月から新たな業績評価軸を導入する方針を固めた。同社が手がけたIPOが発行体や株主、社会から高い評価を得た場合、引受手数料などの一般的な基準に加えて評価する。新制度を支えに、社会にイノベーションを起こすような優良企業の発掘・支援につなげる。

 年初から不安定な市場が続いているが、上場予備軍起業のマインドは堅調。IPO市場も初値が公募価格の2倍となる銘柄が出るなど盛り上がっている。

 16年はロボットベンチャーのZMP(東京都文京区)やJR九州など新規上場が予想され、IPO(新規株式公開)企業数は、15年同様の100社弱になる見通しだ。

 証券会社にとって、IPOで主幹事を取ることは顧客に魅力的な商品を提供することや、将来的な企業との関係強化につながる。各社は足元の業績だけでなく、将来の事業成長の種として、IPO支援に取り組んでいる。
(文=鳥羽田継之)
日刊工業新聞2016年3月18日金融面
安東泰志
安東泰志 Ando Yasushi ニューホライズンキャピタル 会長
東京市場が長らく低迷している間に、アジア国際金融市場の座は香港とシンガポールに奪われてしまった。香港は、背後に中国を抱える強みもあり、IPO数でも東京を圧倒してきたが、ここ1~2年で漸く東京も追い上げてきた。また、日本でもPEが社会的地域を確立しつつあり、IPO候補先の有力な供給源になった。

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