地方経済から見た中国企業の“ニッポン買収”

文=滝口亮(JCナレッジマネジメント代表取締役、日立市日中友好協会理事)

 北海道は、長きにわたり中国人観光客を惹きつけている人気観光地だ。札幌、函館を訪れた後は、知床の世界自然遺産、紋別、網走のオホーツク海流氷ツアーなどを訪れるリピーターも多い。その北海道で2015年11月、大きなニュースがあった。星野リゾートが運営する「星野リゾート トマム」(北海道占冠村)を中国企業が買収したのだ。買収したのは商業施設を運営している上海豫園旅游商城。  そして、その親会社は国際的な投資活動で、急成長した復星集団(フォースン・グループ)。中国系企業による買収と聞くと、ニセコなどでホテル買収が多発したこともあり、今回もマイナス要素の強いニュースだった。ただ、当事者である星野リゾートの姿勢は冷静で、運営も引き続き星野リゾートが担い、名称も変えないとしている。  近年の動きを振り返ってみれば、09年にラオックスが、10年にレナウンが中国企業に買収され、14年に東京スター銀行が台湾企業に買収された。台湾の鴻海精密工業も長いことシャープの買収にこだわっている。  これら老舗企業の買収以外にも、今では多くの分野でチャイナマネーが日本に入り込んでいる。たいていの日本人にとっては歓迎しにくい現象だろうが、足腰が弱った日本企業の経営再建を担っている一面もある。こうした動向に、今や地方も無縁でいられなくなっている。  山形県米沢市でも中国企業に関連した大きな動きがあった。ここにはNECの法人向けパソコン(PC)を生産する米沢事業場がある。どのメーカーも不振が続くPC事業の再編を進める中、NECは11年、中国最大手のレノボと事業統合を実施。  この再編の中で米沢事業場の存続も懸念されたが、一転レノボのノートPC「シンクパッド」の生産が加わり活況が続いている。日本の工場ならではの生産管理システムが注目されて実現したこの事例は、地方に工場を持つ他の製造業にも参考になるのではないか。  一方で、中国系企業を含む海外企業が、水資源を目的に地方の山林買収を進めている報道もある。この問題をよく掘り下げてみると、林業不振から山を手放したいという地主側のニーズもあるようだ。  つまり地方が疲弊し続ければ、こういう買収は増加する可能性が高い。自分たちが住む地域を守り、発展させていくためにも海外の動向に敏感になっておくべきだろう。今後は地方でもグローバルな視点が必要な時代だと言える。

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