ニュースイッチ

星野社長の体験から生まれた日本初のグランピングリゾート「星のや富士」

河口湖で快適空間と大自然のパラドックスを体験してみた
星野社長の体験から生まれた日本初のグランピングリゾート「星のや富士」

たき火を囲い、くつろぐ宿泊客

 キャンプと言えば、テントで一夜を過ごして料理やアウトドアスポーツなどを楽しむものだが、寝食を屋外で行うことに二の足を踏む人も多いだろう。2015年10月にオープンした星野リゾートの「星のや富士」は日本初の「グランピング」がコンセプト。グランピングとは「ラグジュアリー」と「キャンピング」を掛け合わせた造語で、星のやの最上級の設備で、ゆったりと自然と触れ合えるのが特徴。キャンプのいいとこ取りであるグランピングのターゲットは、普段キャンプには縁遠いインドア派だ。
 
 星野リゾートが富士山麓と河口湖を、遮るものもなく一望できる山の斜面に6ヘクタールにおよぶ土地を取得したのは8年前。当初は温泉リゾートなども検討したが、星野佳路社長が4年ほど前に、メキシコでグランピングを体験したことで、コンセプトが決まった。
 
 歴史の浅いグランピングの定義は曖昧で、リゾートの形態やサービスに定型はない。その中で星のや富士が星野社長の実体験からグランピングに必要な要素としたのは、「大自然」「アウトドア体験」「屋外を感じられる客室」「食事」の四つだ。星のや富士には、これらを楽しめる仕掛けがあちこちに施されている。
 

七つ道具がお出迎え


 まず、星のや富士のレセプションで驚かされるのは、壁一面に飾られた色とりどりのリュックサック。このリュックサックには、双眼鏡やヘッドランプなど、6ヘクタールに及ぶ敷地の中でアウトドアを楽しむために必要な七つ道具が入っており、好きなものを選べる。星のやらしい遊び心で出迎えてくれる。
 
 スコープをイメージしたという、40室の客室はキャビン型で、富士山麓と河口湖に向かい斜面に並んで立っている。一面が窓になっており、客室から絵画のようなレイクビューが広がる。テラスにはこたつとランタンがあり、朝と夜は零度以下になる真冬でも、屋外で景色を眺めることができる。このテラスでレイクビューを眺めながらとる朝食は、格別だ。
 
 客室エリアから斜面を登ったところにあるグランドテラスには、たき火を囲うように椅子が並ぶ。午後の時間帯には、フルーツやマシュマロなどのスイーツを炙って食べられるのサービスを提供している。ダッチオーブンで焼いたリンゴのフルーツティーなど、ちょっとしたキャンプグルメも味わえる。
 

醍醐味は「食事」


 グランピングの醍醐味は、なんと言っても、食事。森の中にあるクラウドキッチンでは、専属シェフがダッチオーブンのコース料理を作ってくれる。キャンプグッズとして人気が高まっているダッチオーブンだが、初心者には使い方が難しい。星のや富士では、専属シェフがオマール海老や骨付きラム肉などの高級食材を絶妙な火加減に仕上げてくれるので、キャンプにありがちな焦げた食材や生の料理を食べなくても済むのがありがたい。
 
 アウトドア体験では、早朝にカナディアンカヌーで河口湖から富士山を眺めるアクティビティが楽しめる。このカナディアンカヌー、リゾートのアクティビティにありがちな、乗ってるだけで、オールは雰囲気作りのお飾り、というようなものを想定していたが、自分たちの力で漕がないといけなかったので、結構大変だった。

 河口湖の水の流れに逆らえず、思わぬ方向へ何度も行き、そのたびに、富士山を基準に自分たちの位置を把握した。星のや富士では、このほかに樹海ツアーなど、アウトドアを満喫できるアクティビティをいくつか用意している。
 

まだまだ未完成


 星のや富士のターゲットは、普段キャンプはしないインドア派。オープンから4カ月間の宿泊客は、ファミリー、カップル、友人同士など、さまざまで、年齢層も幅広いという。  

 グランピングの極意は、快適空間で大自然に触れるというパラドックスをいかに楽しむか、ということなのか。夜中にテラスのこたつから、レイクビューを眺めながら、考えた。
 
 ただでさえ定義が曖昧なグランピングがコンセプトの星のや富士は、オープンから4カ月と、まだ間もないこともあり、未完成の部分も多い。今後、さらにアイデアを出してコンテンツを充実させ、日本で唯一のグランピングリゾートの完成を目指す。
(文=高屋優理)
日刊工業新聞2016年3月15日生活面
高屋優理
高屋優理 Takaya Yuri 編集局第二産業部 記者
日本初のグランピングリゾートである星のや富士。アウトドアの楽しみ方など、さまざまなアイディアを練っているそうなので、これからどのような仕掛けが登場するのか、楽しみです。

編集部のおすすめ