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大型M&Aで注目の医療機器。進化する画像診断装置、広がる検査領域

キヤノンが買収する東芝メディカル、看板製品「CT」の実力
大型M&Aで注目の医療機器。進化する画像診断装置、広がる検査領域

被ばく量を大幅に低減できる東芝メディカルシステムズの最新CT

 画像診断装置の高機能化が進み、検査できる部位や疾患などの領域が広がっている。コンピューター断層撮影装置(CT)や磁気共鳴断層撮影装置(MRI)、超音波画像診断装置は病気の早期発見・診断に欠かせない機器として多くの医療機関が導入し一般的な検査で使用される。医療機器メーカーはこれまで診えなかった病変を発見できるように撮像機能を強化する一方、診断時間の短縮など被検者の負担軽減につながる工夫を凝らし利用を促進していく。

CT、被ばく量80%低減


 CT国内トップメーカーの東芝メディカルシステムズ(栃木県大田原市)は、画像の逐次近似再構成技術を搭載したCT「アクイリオンワン/ビジョンファーストエディション」の販売を昨年から始めた。

 逐次近似再構成は投影データを繰り返し処理する過程で、ノイズ成分のみを除去して画像を再構成する技術。X線を使用するCTは被検者の被ばくが避けられないが、新機種は従来に比べ被ばく量を80%程度低減できるため、日常検査でも利用しやすい。

 同機種の標準価格は約60億円と高額だが、従来と同等線量で撮影すれば高コントラストな画像を得られる。これまでのCTでは検出できなかった肝病変などの発見につながると医療関係者からの評価は高い。

 被ばく低減は世界的なニーズであり、東芝メディカルシステムズはこれまでも被ばく低減技術をCT全機種に標準搭載するなど取り組みを進めてきた。CTの世界シェアは現在2位。2015年度は「CTで世界首位を獲り、画像診断機器で世界トップ3に入る」(瀧口登志夫東芝メディカルシステムズ社長)と強調する。

 シーメンス・ジャパンが開発したCTのX線照射技術「ツインビームデュアルエナジー」も注目を集める。X線管から照射される1本のX線束を2種類のエネルギースペクトルに分割し、同時に2種類の異なるエネルギーの画像データを取得できるようにした。

 従来のシングルソースCTでは2回撮影が必要だったが、「ルーチンの一般検査で使いたいというニーズが多く、CT2機種に新機能として搭載する」(森秀顕シーメンス・ジャパン常務執行役員)。

 2種類の画像データを使い、骨や血管、石灰化といった組織を分別し、造影剤成分を取り除くなどこれまでにない画像を得られる。CTは形態の診断に使用されてきたが、今後は機能診断においても有効性が高まり、「従来CTではできなかった検査に対応できる」(森常務)と期待する。

MRI、脳・頭部など診断機能追加


 MRIも新製品の投入が相次ぐ。日立メディコ(東京都千代田区)は静磁場強度1・5テスラ超電導MRI「エシュロンオーバル タイプオリジン5」に脳や頭部、肝臓の診断機能を新たに追加した。

 細胞膜や細胞内の小器官などによって水分子の拡散が制限される現象を強調して計測する機能を搭載。これにより脳の微細構造情報を得やすくなり、パーキンソン病や脳腫瘍の悪性度診断がしやすくなる。狭窄(きょうさく)などによる血行の動態変化を可視化する機能を新たに肝臓にも適用した。

 GEヘルスケア・ジャパン(東京都日野市)の川上潤社長は「世界でもっとも売れる3テスラMRIが完成した」と意気込む。MRIは静磁場強度が高いほど高画質な画像を撮像できる。先進国の医療機関では既に1・5テスラMRIが普及しており、今後は3テスラMRIへの買い替えが進んでいく。GEヘルスケア・ジャパンの新製品「シグナ パイオニア」はその需要を見越して機能を強化した。

 撮像面では1回のスキャンで六つの異なるコントラスト画像を取得できるMAGiC機能を業界で初めて搭載。撮影時間は従来の3分の1の5分程度に短縮された。設置面積は3テスラMRIとしては最小で、1・5テスラと同等の30平方メートル以下にした。

 システムの必要電源容量は従来の100キロボルトアンぺア以上から77キロボルトアンぺアに抑えたため、医療機関は運用コストを削減できる。大規模病院や地域中核病院など高度な診療を提供する医療機関に買い替えを提案していく。

<次のページは、超音波画像診断装置、肝臓など治療分野広がる>

日刊工業新聞2015年5月4日ヘルスケア面の記事を一部修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
昨年5月に掲載した記事だが内容は現在とほとんど変わらないのでぜひ参考に。

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