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被災地での理科実験・実習を全国の小中校で展開―お茶の水女子大

南海トラフ地震の備えを進める高知で試行
被災地での理科実験・実習を全国の小中校で展開―お茶の水女子大

タブレット顕微鏡で火山灰を観察する(お茶の水女子大提供)

 お茶の水女子大学サイエンス&エデュケーションセンター(SEC=セック)は2016年度から、被災地における理科実験・実習支援事業の全国展開に乗り出す。まずは東日本大震災後に岩手県教育委員会と協力して開発した小中学校の仮設教室向け教材を活用し、南海トラフ地震の備えを進める高知県のモデル校で試行する。被災した体験を持つ教員の知見を加えつつ小中学校の全分野に対応した教材キットと活用ノウハウを確立する。

 お茶の水女子大SECが提供するのは仮設教室や間借り教室に適した省スペースで安価、安全な実習支援教材。東日本大震災で被災した岩手県の小学校では、SECが開発した折り畳み式のてこ実験装置、土の中の小生物を集めるツルグレン装置などが使われた。

 砂場や運動場を使わないトレイ型流水実験法やタブレット端末(携帯型情報端末)を使った顕微鏡観察法も確立している。こうした個別教材を用いて、キットを作成する。
 
 地震や台風、洪水などで甚大な被害を受けた後の学校教育では、まず仮設教室での座学再開に力を入れる。このため備品が必要な実験・実習は省略されがちで、理科教育に遅れが生じる懸念がある。

 東日本大震災の発生時は約1カ月で座学が再開されたが、理科実験・実習は1年以上実施されなかった。一部の学校では再開まで3年以上要したという。
日刊工業新聞2016年3月7日 総合1面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
座学ばかりでは学習もマンネリ化してしまいます。仮設教室向け実験設備を考え、使っていくことが逆に、平時の実験設備をより効率のよいものにブラッシュアップするきっかけとなるかもしれません。

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