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《中堅電子部品メーカーの生きる道#01》日本航空電子&NECトーキン

《中堅電子部品メーカーの生きる道#01》日本航空電子&NECトーキン

NECトーキンの小山社長(左)と日本航空電子の小野原社長

 電子部品業界で次世代の有望市場をめぐる競争が活発化している。スマートフォン市場の成長鈍化で、大手を中心に車載や産業機器向け部品事業に経営資源を集中させていることが背景にあり、業界の垣根を超えた戦略的提携も加速している。中堅部品メーカーはどう対応していくのか。各社のトップに次の一手を聞く。

日本航空電子工業・小野原勉社長


 ―スマートフォン向けコネクターの需要動向は。
 「販売台数成長は鈍化しているが、新興国で端末が普及するなど2016年度も大きな市場であることに変わりはない。マーケティング力と製品提案力を高めて販売数量を維持するとともに、生産技術の高度化で価格下落分をカバーし収益性を維持する」

 ―次世代USB規格「タイプC」に対応した新型コネクターの先行きをどう見ますか。
 「大電流供給やデータの高速伝送が可能な使い勝手のよい製品で、スマホ向けを中心に引き合いが増えている。規格作りに携わったメーカーの1社として、普及に力を入れる。将来的に100億円程度の事業規模にすることを目指す」

 ―車載向け部品がスマホと並ぶ収益源になっています。
 「車載カメラ用コネクターや車室内のディスプレーなどに使われる静電容量方式のタッチパネルなどが伸びている。自動運転や先進運転支援システム(ADAS)など車の電装化で広がる部品需要を着実につかんでいきたい」

 ―新しい収益の柱作りが課題です。
 「ロボットを含めたFA(工場自動化)機器や工作機械向けに照準を合わせている。航空機用機器製造により培った技術ノウハウを応用したデバイスが、半導体露光装置の駆動部に採用されるなど徐々に成果も出始めた。顧客の開発動向を見極め、適切なタイミングで製品を提案していくことが開拓に向け重要だ」

【記者の目・新分野開拓カギに】
 ここ数年、スマートフォンの台数成長の拡大とともに、業績を大きく伸ばしてきた。17年3月期以降はスマホによって一定の収益が見込めるうちに、産業分野など新分野市場を開拓できるかがカギになる。重要視する生産技術の高度化に向けた投資に加えて、マーケティングや営業体制の一層の強化が求められている。
(聞き手=下氏香菜子)

NECトーキン・小山茂典社長


 ―16年3月期は2期連続で増収増益を達成する見通しです。
 「車載・産業機器向け部品の売上高構成比率が6割と民生機器向けを上回り、安定して収益を上げられる事業構造が定着した。最新設備の導入で生産性が向上したことや、高機能部品の開発と拡販に成功したことも収益を後押ししている」

 ―主力の車載向けリレーの受注動向は。
 「車の電装化で部品搭載数が増えていることから、当面は安定成長が見込めるだろう。今後はパワーウインドーなどに搭載する小型品に加え、大電流に対応できるリレーを伸ばしていきたい」

 ―来期の設備投資計画は。
 「スマホ向けの薄型ポリマータンタルコンデンサーと、産業機器向けの電気二重層キャパシター(EDLC)の増産投資に充てる。EDLCは特にスマートメーター(通信機能付き電力量計)向けが伸びている」

 ―新事業の進捗(しんちょく)は。
 「10年前からメーカーと共同開発を進めていたガスメーター向けの圧電セラミックスが収益の一つになりつつある。ガスの流量を高精度に割り出せるのが特徴。当社独自の材料開発技術や加工技術を活用しており、この分野に競合が参入するのは難しいと見ている」

 ―他社との戦略的提携を考えていますか。
 「現時点で具体的な話はない。ただ、モジュール化への対応など自前では事業拡大が難しいと判断した場合は、アライアンスをはじめあらゆる選択肢を検討したい」

【記者の目・“リレー以外”不可欠】
 事業構造の転換に成功し、業績は安定成長期に入ったといえる。主力の車載向けは耐熱性に優れたパワーインダクターなど、リレー以外の部品を拡販できるかが、事業をより盤石にするために不可欠。新規事業は環境・エネルギーや医療分野を中心に部品や材料の採用が増えている。着実に需要を取り込む体制作りが求められる。
(聞き手=下氏香菜子)
日刊工業新聞2016年2月24日 電機・電子部品
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
今年、中堅電子部品メーカーは業界再編対象として要注目。連載インタビューがスタートです。

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