マイナス金利時代、お金はどこに預けどこから借りれば?

地産地消の地方金融機関、“脱担保主義”に向かうか

黒田日銀総裁

 日銀は16日から、当座預金の一部にマイナス金利の適用を始めた。メガバンクや地銀などは収益への影響を懸念し始めているが、信用金庫の中には「預金者の不安を払拭(ふっしょく)する」として、金利を上乗せするなど“マイナス金利の逆張り”を始めたところもある。  全国銀行協会の佐藤康博会長(みずほフィナンシャルグループ社長)は18日の会見で、日銀が導入したマイナス金利政策について、「金利全般の低下により、貸し出しビジネスへの間接的な影響が出てくる」と述べた。金利低下が続く中で今後は「各行が知恵を絞って金融仲介機能を発揮していくことが重要だ」とも述べた。  長期金利が一段と低下したことを受け、金融機関は国債で運用する一部の投資信託の販売を停止。収益悪化を懸念して、預金金利の引き下げなどを相次いで実施した。  今後について、佐藤会長は「どの程度の影響が出てくるのかもう少し見極めることが重要」とも述べた。  遠賀信用金庫(福岡県岡垣町)は金利を上乗せした預金商品「あんしん定期預金」を発売した。1年満期で金利は従来商品に0・125%上乗せした年0・15%とした。個人を対象に、限度額は20万円以上300万円以内。募集金額は30億円。なお公共料金口座などを持つ顧客は年0・20%まで上乗せする。  「預金を地産地消する信用金庫は、マイナス金利という言葉のインパクトが大きい。預金者に必要以上に不安を与え、預金金利もマイナスになるのかなど問い合わせが相次いだ。高齢者のタンス預金を防ぐ目的からも金利上乗せ商品を提供することで安心感を与えたい」(業務推進部)としている。  一方、熊本第一信用金庫(熊本市中央区)も1年満期の定期預金金利0・025%(1000万円未満)、0・03%(1000万円以上)を、0・1%(50歳以上は0・08%)に引き上げた商品を発売した。新規で50万円以上(50歳以上は100万円以上)が対象。渡邉祐一常務理事は「マイナス金利は日銀と金融機関の問題であって、預金者に影響はない。不安感の払拭(ふっしょく)こそ地域金融機関の役割だ。若い人は住宅ローンや教育資金で苦労しているので、少しでもお役に立ててもらいたい」と話した。  西武信用金庫(東京都中野区、落合寛司理事長、03・3384・6111)は、預入期間が3年と4年の定期預金の金利について、3月1日から店頭表示金利に0・01%上乗せする。5年の定期預金は0・02%加える。日銀のマイナス金利を受けてメガバンクなどが預金金利を引き下げる中、逆に金利を引き上げることで新規顧客を開拓する。  また3月1日から中小企業向け通常融資の金利を最大半分に引き下げる。  国際協力銀行(JBIC)は18日、定例会見を開き、渡辺博史総裁が、日銀のマイナス金利政策導入の自行の投融資業務への影響について「直接の関係はない」と述べた。「(JBICへの)投資やM&A(合併・買収)のファイナンスは大きな金額のものだけが来ている。企業の一般的な投資はメーンバンク等で対応が終わっている」と背景を説明した。 <次のページは、中小企業への貸出金利も下げてはどうか> 文=大井幸子(国際金融アナリスト兼SAIL社長)  日銀黒田総裁がマイナス金利を導入し、日本国債10年物も史上初のマイナス金利を付けた。現状の市場心理もこの現象には、大きなリスクを感じている。なにしろ、マイナス金利自体が非資本主義的であり、「利子が利子を生む」ことで投資が促進され、拡大再生産を実現するという資本主義の大原則を覆す危険がある。さらに、貨幣の価値、すなわち円の価値すらなくなるというリスクもはらんでいる。  マイナス金利でいっとき得するのは、国債という名のもとに借金を増やし続けてきた政府ではないだろうか。利子の支払い分が減るので、国庫にとってしばし負担がラクになる。ただし、財政赤字を元本から減らせるような効果はないだろう。当面、日銀が株や国債を購入する「最後の買い手」と位置づけられ、投資家がそう確信しているうちは、短期収益を狙う売買が活発になるだろう。ただし、日銀が中央銀行としての信認を確保できればという前提条件がある。  こうした異常事態が続けば、国民は一生懸命働いて将来のためにお金を貯める気力が徐々になくなり、勤労意欲を失い、若者はますます希望が持てなくなってしまう。これこそが大きな社会的リスクである。日本の資本主義を支えてきた勤勉な精神や貯蓄、堅実な経営の基盤が失われてしまう。  日本の国民経済を芯から支えるのは中堅中小企業である。そのなかには、独自技術を持ち、グローバルに成長する機運に満ちた経営者も多い。成長期にさしかかると企業は設備投資や販促のために資金需要が増えてくる。ここで問題なのが資金調達である。多くの経営者は融資を受けるために銀行に担保を差し入れる。  自社株を担保に差し出している場合、株価が急激に下げると担保不足となり、不安にかられた銀行が貸し渋りや貸し剥がしといった行動にでる懸念がある。リーマン・ショックの直後には、貸し剥がしで黒字倒産に見舞われた優良中小企業が筆者の周囲でも見られた。  マイナス金利で銀行の預金金利が下がるのであれば、成長戦略の一環として中小企業への貸出金利も下げてはどうだろうか。担保主義だけでは、第一担保を握るメガバンク、第二担保を持つ地銀の力関係において地域金融機関はますます苦しくなるばかりである。  アベノミクスも正念場に差し迫っている。今年度の決算に向けて、多くの経営者や年金基金運用者の注目は、3月31日の日経平均株価であろう。成長戦略の一環として年度末の帳尻合わせが無事済めば、新年度から経済を良くしていこうという展望が開けてくるかもしれない。

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