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ボンドカーもいずれ電動車に? アストンマーティンが中国企業と高級EV開発へ

「テスラキラー」の米ファラデー・フューチャーとも協力
ボンドカーもいずれ電動車に? アストンマーティンが中国企業と高級EV開発へ

アストンマーティンが昨年10月に披露したRapide Eコンセプト(同社のウェブサイトから)

 英高級スポーツ車メーカーのアストンマーティンが、インターネットビデオ配信やスマートフォンなどIT関連事業を幅広く手がける中国のLeEco(旧Letv)と組み、初の電気自動車(EV)の量産モデルを共同開発することになった。

 両社で合弁会社を設立し、2018年までに発売するという。第1弾として、アストンマーティンの4ドアラグジュアリースポーツ車「ラピードS(Rapide S)」をベースにした「ラピードE」の量産車を開発する。

 17日にアストンマーティンのアンディー・パーマーCEOと、LeEcoの自動車部門、SEE Planの共同創設者兼副会長であるディン・レイ(Ding Lei)氏がドイツ・フランクフルトで提携の覚書に調印し、記者会見で明らかにした。ディン・レイ氏は、中国でフォルクスワーゲンやゼネラルモーターズ(GM)の合弁会社の幹部を務めた経験を持つ。

 実はこれに先立ち、昨年10月の習近平国家主席の英国訪問に伴って、アストンマーティンはラピードEコンセプトをロンドンのランカスターハウスでのイベントで披露。同行した中国の投資グループ、チャイナエクイティーとの間で、その量産車について共同開発の道を探ることで合意した。さらにLeEcoとは車載インターネット(IOV)システムをラピードSに搭載することで昨年12月に提携。今年1月にラスベガスで開かれた「CES」にその成果を展示した。今回のEV共同開発で、EVに力を入れるLeEcoとの協力関係をさらに拡大した格好だ。

 これに加え、両社は新しい合弁会社を通して、LeEco創業者のジア・ユエティン氏が2014年に米国に立ち上げたEVスタートアップのファラデー・フューチャー(ロサンゼルス)とも協力する。次世代のEVコネクテッドカーを開発する計画という。ファラデー・フューチャーは「テスラキラー」とも言われ、1月の「CES」にはまるで未来のレースカーのようなEVコンセプト車を出展し、大きな話題となった。

 中国が主導するAIIBへの参画劇や、新設原発の中国企業への発注でも明らかなように、英国はこと経済政策面では中国寄りのスタンスをとる。今回のEV共同開発も両国の後押しが効いているようだ。映画『007』シリーズのボンドカーでもお馴染みのアストンマーティンだけに、そのブランドの威力は抜群。中国だけでなく、ほかの市場でも人気車種となるのは確実だろう。
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藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
中国のITネット企業が続々とEVや自動運転車の開発に乗り出している。バイドゥやアリババのほか、あの鴻海(ホンハイ)とインターネット大手のテンセントおよびチャイナハーモニーの合弁企業もスマートEVの開発に乗り出している。なぜEVかというと、大気汚染の問題で中国政府がEVを奨励しているためだ。そうしたことから、ロイターが中国政府関係者の話として伝えたところによれば、昨年はEVの売れ行きが前年の約4倍まで伸び、世界最大のEV市場になったという。

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