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タブレット台頭から一転、パソコン出荷に底打ち感

低価格「スティックPC」も注目の的
タブレット台頭から一転、パソコン出荷に底打ち感

ノート型にもタブレットにもなる2イン1

 2013年まではタブレットの台頭が著しく、パソコン出荷台数が減少するという影響が見られた。ただ、こうした現象も14年に入って一服し、パソコンに底打ち感が出ている。パソコンの出荷台数は、世界市場で13年に前年比11%の減少となったが、14年は1%の微減にとどまった。パソコン稼働台数の調整は済んだと見ている。

 ガートナーが実施したエンドユーザー調査によれば、13年も14年もノート型、デスクトップ型、スマートフォン、タブレットの持ち主で「1年以内に買い替える」と回答したうちの約3分の1が「今のデバイス以外にする」と答えている。

 これまで、ノート型からタブレットへの移行が進むものと考えられていたが、実際にはノート型から薄型軽量のノートパソコンに買い替えたり、タブレットからスマホやツー・イン・ワン(ノート型にもタブレットにもなるパソコン)に戻る動きが出てきている。

 つまり、「ノート型→タブレット」という1方向だけの現象が起こっているのではない。特に13年後半から14年にかけて、ウィンドウズ系のタブレットやツー・イン・ワン製品が多数市場に投入され、乗り換えの選択肢も豊富になってきた。

 とはいえ、パソコン市場が今後、急激に伸びる状況にはない。パソコンが普及していない新興地域では、もはや最初に買うパーソナルなコンピューティング製品はパソコンではなく、低価格スマホやタブレットを選ぶユーザーが増加中。手軽なネット送金サービスなどモバイル・サービスで先進諸国に先んじる地域もあり、「モバイルファースト」が定着している。

 一方で、コンテンツ制作・編集、長時間のメールや検索、ネット通販やネットバンキングといった用途では、キーボードがあり画面が大きいパソコンのニーズが根強い。世界市場でのパソコン出荷台数は、短期的な浮き沈みはあれ、長期的には真にパソコンを必要とする利用者の需要に支えられ、横ばいから1ケタ前半の伸びを保つものと予想している。

 注目されるカテゴリーとしてはタブレットから戻る、あるいはノート型からの買い替え先としてツー・イン・ワンが増えるであろう。「スティックPC」も注目の的だ。

 スティックPCは、小型デバイスを液晶ディスプレーや液晶テレビのHDMI端子に差し込むことで、ウィンドウズやリナックスのパソコンとして使える。国内ではマウスコンピューターが14年末に発売し、米インテルも年内発売を予定。パソコン代わりに使えるほか、ネットカフェ、電子看板やビデオ・ストリーミング端末などの組み込み用途も想定され、価格の安さと併せて市場が大きく伸びる可能性がある。

「テクノロジーウオッチ!進むデジタル化」(2)パソコン
ガートナージャパン リサーチ部門主席アナリスト 蒔田佳苗
日刊工業新聞2015年04月08日 電機・電子部品・情報・通信面
藤元正
藤元正 Fujimoto Tadashi
インテルのスティックPCについては、アイ・オー・データ機器が4月30日に国内販売を開始すると発表。実売価格で2万数千円台と非常に安い。パソコン市場を食うことになるのか、それとも新しい分野の需要開拓につながるのか、動向が気になるところ。

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