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マイナス金利「三日天下」 円高進行はどこで止まるか

 11日のロンドン市場で円相場が一時、1ドル=110円台まで値上がりするなど円高ドル安が急激に進み、12日の東京株式市場は続落で始まり、一時、株価も1年4カ月ぶりに1万5000円台を割り込んだ。世界経済の成長鈍化で欧州銀行の財務状況が悪化しているという見方から、安全資産とされる円が買われている。

 「日銀の防衛ライン」と市場で呼ばれる1ドル=115円を超えた円高水準を一気に突き抜けた。マイナス金利は円安を後押しするため、1月29日の導入決定後に一旦は円安に振れたが、3日ももたずに円安効果は剥落した。現時点では「劇薬」のマイナス金利政策の副作用のみが出ている格好だ。
 
 マイナス金利は理論上は内外の金利差が拡大し、円安は進む。だが、初のマイナス金利導入の実体経済への影響は未知数。金融機関への影響など副作用に注意が払われたことや、中国経済の先行き、米経済指標が力強さに欠くなど海外の不安要因に円安効果がほぼ打ち消された格好だ。
 
 市場関係者の多くは「いずれは円安ドル高基調に戻る」と指摘するが、問題は時期。「早くても3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)以降」との見方が支配的で、それまでは原油安などの影響もあり、リスクは後退せず、為替は一進一退が続きそうだ。
 
 円安ドル高基調が鮮明になるには日米の金利差が明確になることが必要条件。米国は回数は不透明なものの段階的に利上げを実施するのは既定路線だ。日銀も年内に追加緩和策を打ち出す可能性が低くなく、円安ドル高の路線は敷かれている。
 
 懸念は追加緩和策の選択肢が限られる。黒田東彦総裁はマイナス金利幅の更なる拡大も否定しないが、13年4月、14年10月の「バズーカ」に比べると効果が不透明なのは現状が物語る。また、手詰まり感の露呈からか、15年12月の補完措置も含め、導入決定後の為替への効果は減衰している。

 黒田総裁はマイナス金利導入決定後の3日、都内で講演。金融政策の限界を否定しながら、最後には「2%の物価目標の実現のために、できることは何でもやる」と珍しく気色ばんだ。2%達成の道筋は見えにくくなるばかりだが、「黒田さんは本当に何でもやる」と追加施策への期待だけは市場では高まっている。
日刊工業新聞2016年2月11日2面記事に加筆
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
日米の金融政策の違いから、円安ドル高路線に戻るのは間違いないでしょうが、記事にあるように、問題はその時期でしょう。

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