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2016年春闘の焦点、中小企業の賃上げどこまで?

ベア検討の動き広がるも人手不足が圧力に
 中小企業で定期昇給やベースアップ(ベア)実施を検討する動きが広がっている。衆議院調査局経済産業調査室が2015年11月末に全国約2万3000社を対象に実施した調査によると、定期昇給、ベアともに実施割合が14年の前回調査から上昇した。人手不足は業種や地域問わず深刻化しており、中小企業への賃上げ圧力として強まっている実情がうかがえる。

 衆議院調査局経済産業調査室の調査によると、今後の賃上げについて「定期昇給を実施する」の回答割合が前回調査の44%から48%に、「ベースアップを行う」の割合も同12%から15%にそれぞれ上昇した。賃上げの理由は「従業員の待遇改善」(71%)「人材確保」(49%)の順で多く、それぞれの回答割合も前回調査から上昇している。企業規模別では、定期昇給の検討割合は中小企業では53%に上るのに対し、従業員20人以下(小売り・サービス業は5人以下)の小規模企業では32%と低さが際立った。

 「賃金を引き上げる予定はない」との回答割合も中小企業の13%に対し、小規模企業は28%に上った。経済産業調査室では「経済が回復基調にあるにもかかわらず、小規模企業は賃金を引き上げるまでには至っていないことがうかがえる」とみている。

 16年春闘交渉は、大手企業と中小との賃金格差解消が焦点のひとつ。連合は、中小企業の賃上げ要求水準を、定期昇給とベアを合わせて「1万500円以上」を目安とする。だが、大手との取引環境の是正を通じた原資確保が実現できなければ、人材獲得のための無理な賃上げが中小企業の苦しい台所事情をさらに悪化させる恐れがある。

 調査は衆院調査局に設置されている経済産業調査室が実施。1万649社から有効回答を得た。
日刊工業新聞2016年2月4日付総合3面
神崎明子
神崎明子 Kanzaki Akiko 東京支社 編集委員
ただ、この調査は2015年11月に実施されたもの。中国経済への先行き懸念と原油価格の暴落といった経営環境の変化は十分反映されているとはいえません。もし、日本経済の「潮目」が変わっているならば、調査結果も異なるものになったのでは。

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