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春節商戦、“爆買い”以外の新しい価値を提供できるか

「ここだからできる」体験へ工夫こらす
春節商戦、“爆買い”以外の新しい価値を提供できるか

三越銀座店に開業した空港型市中免税店

 7日に始まる中国・台湾や韓国の旧正月(春節)休暇を間近に控え、日本の小売り各社が商機をつかもうと準備を急いでいる。三越伊勢丹ホールディングス(HD)などは消費税に加え、関税や酒税、たばこ税も免税になる空港型市中免税店を三越銀座店に開いた。大手コンビニエンスストアも中国の「銀聯カード」や決済サービス「アリペイ」などへの対応を拡充する。

 もっとも昨年の旧正月前に比べると店側の動きは鈍い。訪日客が多く訪れる店舗では免税カウンターなどのインフラはほぼ整ってきた上、外国人に合わせた店作りをすることで、かえって日本人の客が離れてしまうことへの懸念も背景にある。

 観光庁が2015年10―11月に、訪日外国人を対象に実施した消費動向調査では、「訪日前に期待していたこと」「次回したいこと」の上位は、「日本食を食べること」「ショッピング」「自然・景勝地観光」だった。買い物とともに、日本やその地域ならではの経験をしたいとの思いがうかがえる。

 こうした声に応えようという動きは見られる。そごう・西武は西武池袋店で緑茶の試飲や着物の試着ができる会場を設け、三越伊勢丹は基幹3店舗で日本のポップカルチャーなどを紹介するイベントを、期間限定で実施中だ。松屋銀座はバレンタイン向け販促を兼ね、訪日外国人向けに、ユズや和栗など和素材を用いた同店限定のチョコレートを販売する。

 特に百貨店では好業績の要因となっている”爆買い“の勢いは、しばらく続くとの見方が強い。「他の店や国でも扱っている商品」を買いやすくする工夫とともに、“ここだからできる”インパクトある提案が求められる。

菓子・医薬・日用品メーカーも新商品で「おもてなし」


 「爆買い」需要を取り込もうと、菓子や医薬、日用品メーカーも新商品を投入している。商品以外でも日本の思い出づくりを提供するサービスを始めている。

 小林製薬は中国メディアで「日本に行ったら買わねばならない12の医薬品」に「熱さまシート」などが取り上げられ、1月に中国人が好きな金色のパッケージの日本限定の「熱さまシート」を発売。昨秋発売の乾燥肌治療薬「さいき」なども訪日外国人向けの重点品に位置づける。小林章浩社長は「これまでヘルスケア商品中心だったが日用品にも広がっている」と分析。今春の新商品の芳香消臭剤などでさらなる需要を取り込む考えだ。

 江崎グリコは2日に「ご当地みやげポッキー」新製品3種類を全国の7国際空港の免税エリアで発売した。夕張メロン、信州巨峰、宇治抹茶の地元素材の味を生かしたポッキー3種。日本限定品とパッケージに入れ、数カ国対応のPOPを使う。今月中旬からは中国観光客が日本旅行時の観光やお土産などで参考にする「逸行サイト」で紹介する。

 外国人観光客向け写真スタジオを運営するFour―M(大阪市中央区、高尾元健代表、06・6606・9538)はサービス需要を狙う。高尾代表は「もっと日本を知り、好きになり、また来て頂きたい」と日本らしい思い出づくりを提供する。

 大阪市中央区の“黒門市場”に訪れる外国人観光客や近隣のホテルの宿泊客など対象に日本アニメのコスプレや和服の衣装を貸し出し、和室など全8ブースのスタジオで撮影した写真をその場で加工現像する。
日刊工業新聞2016年2月3日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
中国経済は減速していると言われますが、この春節も「爆買い」の勢いは続きそうです。大型商業施設では中国人スタッフや外国語のPOPが目につくようになり、今後も空港型市中免税店の開設が予定されています。ただ自分が海外旅行をする際は、外国人向け店舗への誘導や日本語が話せるスタッフの接客よりも、多少は不便でも現地ならではのサービスを体験したいと感じるかもしれません。 (日刊工業新聞社編集局第二産業部・江上佑美子)

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