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沖縄の大動脈で出会った「奥の国道」

 沖縄県北部、やんばると呼ばれる地域にある国頭村「奥」地区。沖縄本島を南北に貫く国道58号線を那覇から北上し、最北端の辺戸岬まで車で3時間。道は折り返すように南へ大きく回り、一転して山深くなる。左右にうねりつつ15分ほど上下して、ようやくたどりつく。

 奥川のせせらぎの先には海が広がる。ひたすら車を走らせてきた後だけに、つい「沖縄版“奥の細道”か」と冗談が口をつく。だが、ここは“奥”であると同時に“入り口”でもあるのだ。

 国道58号線の起点は鹿児島市にある。海を越えて種子島と奄美大島を経由し、奥地区で初めて沖縄に上陸する。そこから那覇市南西部までを結ぶ。

 県内約125キロメートルの道程は、沖縄を感じることができるドライブコースだ。青い海と白い浜辺、木々の濃い緑。特有の生活風土に加えて、立ち並ぶリゾートホテルや米軍基地の大きさも実感する。沖縄が抱き、背負うものがダイジェストで見られる。

 奥地区の商店では「到着証明」を販売している。日付を入れてくれた年配の女性に聞くと「今年で創業110周年ですよ」とのこと。共同売店や共同店と呼ばれる沖縄特有の業態の発祥地なのだそうだ。道の始まりは、また文化の始まりでもあった。
日刊工業新聞2016年1月22日1面「産業春秋」
三苫能徳
三苫能徳 Mitoma Takanori 西部支社 記者
国道ファンではありませんが、道の起点とか終点って、なんか妄想はかどりますよね。

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