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初音ミク、ファッションのためのロボット、マツコロイド―ロボットと人間の関係を探る

「ロボット未来フォーラム」で語られたこと。(前編)
初音ミク、ファッションのためのロボット、マツコロイド―ロボットと人間の関係を探る

左から、伊藤 博之氏 、きゅんくん、吉無田 剛氏

 2015年12月5日、「2015際ロボット展」内にて、「ロボット未来フォーラム」が開催された。ロボットをとりまくクリエイター3人が、それぞれの活動を通して感じ、考え、表現してきた「ロボットと人間」との関係性についてディスカッションした。


<登壇者>
クリプトン・フューチャー・メディア 代表取締役 伊藤 博之 氏
ロボティクス ファッションクリエイター きゅんくん
日本テレビ放送網 制作局「マツコとマツコ」担当プロデューサー 吉無田 剛 氏

<モデレーター>
日刊工業新聞社 ニュースイッチ 編集長 昆 梓紗


――このセッションではロボットを取り巻く話題の方にお越しいただきました。
ロボットと人間の関係性、ロボットをめぐる創造性についてお話を聞かせていただこうと思います。では早速、自己紹介を始めていただきます。

「初音ミクは創作の連鎖を生んだ」


伊藤博之氏(以下、伊藤):伊藤です。うちの会社で開発している初音ミクというものについて、ロボットではないですけどお話をさせていただきます。
ユーチューブやニコニコ動画で、初音ミクで検索すると、ものすごいたくさんの曲が出てきます。彼女が歌っているオリジナル曲が10万曲ほどあると言われています。また、初音ミクのコミュニティも運営しています。英語で情報発信しているfacebookでは250万人ほどの登録があり、中国のツイッターみたいな「微博(ウェイボー)」というものがあるんですけど、そこではフォローワーが80万人以上います。

 という初音ミクなんですが、この正体は音楽のソフトウェアなんですね。ヤマハが開発した歌声を合成するボーカロイドの技術を使って開発したソフトウェアの1つが初音ミクという名前のソフトなんです。音声技術、それからコンピュータミュージック、そのふたつの間の技術です。
コンピューターミュージックに関してはいろいろな会社が研究していたんですけれど、歌声を合成する技術は実はそれまであまり取り組まれてこなかったんです。どうやって商売にしていくのかがイメージしづらかったということもあるんでしょうね。

 歌声合成技術は要素技術的には昔からあるものなのですが、比較的最近脚光を浴びてきたものです。初音ミクはそこにキャラクターというか、視覚的要素をつけました。で、音声合成技術に対してキャラクターというものは、まあ、言ってみればおまけみたいなもので、本体の技術に対すると取るに足らないという風に考えられがちです。しかしキャラクターをつけたことで、さまざまな創作を連鎖的に引き起こすきっかけになっているわけです。

 歌声を合成するソフトなので音楽を作ったり、しゃべるだとかそういった音楽や映像などの作品を作る人には機能を使って作品をつくる期待はできるわけです。しかし歌声だけではなくてキャラクターがあったので、インターネット中心にイラストや動画の中に3Dデータを使った作品が出てきて、それがまたさらに別の作品の創作のきっかけになっていった。

 2次創作されるものはイラストや動画だけじゃなくて、技術開発を初音ミクというモチーフを使ってされる方がたくさん出てきました。3DCG等のコンサートなどもやっていますので、そういった最先端技術の親和性は高いわけですね。なので技術を開発する方の1つのモチーフとして初音ミクが用いられる事が多かったんです。
3DCGモチーフにしたコンサートを日本国内でやったんですけど、海外でも非常に引き合いが多くてですね。アメリカや東南アジアなどでも開催した。また、「ミクエキスポ」というコンサートと展示のイベントを世界各国で開催していきました。2016年3月から4月にかけて日本で国内ツアーをやります。そのあと、北米3か国7都市をめぐるツアーを開催する予定です。

 こんな感じでバーチャルというかモチーフとしては歌声合成、そこから付随するキャラクターからスタートしたのですけど、さまざまな創作、というか人間(クリエイターさん)が後ろにいて、クリエイターの作品が初音ミクという一つのモチーフでコンサートみたいなのを行っていることを紹介しました。

――初音ミク以前ではこういった2次創作のミューズはなかったんですかね?

伊藤:あったと思うんですけど、歌声というものがついた事でより感情が表現しやすかったんだと思います。人間のように話すことが大事ということです。

ニュースイッチオリジナル
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
前編が自己紹介で終わってしまってすみません。ですが自己紹介の中にも各人のスタンスや取組みの面白さが詰まっていましたので、ほぼ話した内容そのまま掲載しました。後編はいよいよディスカッションに入ります。

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