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日本で「デロリアン」を走らせた男が描く本当のフューチャー

日本環境設計・岩元社長に聞く「資源リサイクル、地下資源戦争をなくせる」
日本で「デロリアン」を走らせた男が描く本当のフューチャー

岩元社長と古着を燃料にして公道を走った「デロリアン」

 日本環境設計(東京都千代田区)は2015年10月、古着から作った燃料で映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場するタイムマシン「デロリアン」を走行させて話題をさらった。同社は古着や携帯電話を燃料や資源に再生するリサイクル事業を展開する。イオンやセブン&アイ・ホールディングスなど150社から年500万点の使用済み製品が集まる回収網が事業基盤だ。07年設立の環境ベンチャーが快進撃を続ける理由を岩元美智彦社長に聞いた。

 ―「環境に良いからリサイクルしよう」と呼びかけるのが普通です。「わくわく、楽しくやろう」と訴えるのはなぜですか。
 「リサイクルは技術、仕組み、行動のトライアングルが必要。技術を開発し、工場を作っても回収が爆発的に増えないと”いい話“で終わる。”わくわく“がないと消費者は動かず、使用済み製品を回収箱に入れてくれない」

 ―劇中でタイムスリップした同じ日、同じ時間にデロリアンを走らせたイベントが”わくわく“ですね。
 「米NBCユニバーサルにかけあって実現した。消費者もデロリアンを動かそうと使用済み製品を持ち込んでくれる。本物のデロリアンだからメディアも報道してくれて、普段の10倍以上の勢いで集まった」

 ―回収箱を店頭に置くことなどで協力する企業が150社もあります。
 「1社1社飛び込みでお願いした。スーパーなど消費者の動線上に回収箱がないとリサイクルは進まない。どの企業にも同じリサイクルの仕組みを提供している。競合だからという理由で企業別に仕組みが違うと、消費者もわくわくしない」

 ―インドとバングラデシュで計画しているリサイクル事業は。
 「(廃棄物の国境を越えた移動を禁じた)バーゼル条約をクリアし、インドから電子機器を運べるようになった。16年中に日本でリサイクルし、再生した資源を市場に売却して利益を還元する。インドの学校では『資源リサイクルができると地下資源をめぐる戦争をなくせる』と説明している。伝わりやすく、回収率が高い。バングラデシュは調査中だ」

 ―古着のポリエステル繊維を石油由来品と同じ品質のポリエステル原料に再生する新工場の稼働予定は。
 「16年末―17年初めに北九州市で稼働する。処理能力は年2000トンだが、15倍の規模を想定し設計している。石油由来と同等のコストにならなくても、石油を使わない付加価値を認めてもらえる。国内にある資源を繰り返しリサイクルできれば、資源の輸入依存度を下げられる」

【記者の目・常識疑うところに成功の秘訣】
繊維、樹脂、金属など特定の素材に特化したリサイクル技術でないのも、同社の特徴だ。スーパー、眼鏡チェーンなど幅広い業種の企業が参加できるので回収量を確保できる。確かに資源の視点から考えると、リサイクルは素材や業界別である必要はない。常識を疑うところに環境ベンチャー成功の秘訣(ひけつ)がありそうだ。
(聞き手=松木喬)
日刊工業新聞2016年1月22日環境面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
岩元さんとは直接お話したこともあるし、ピッチイベントで何度かプレゼンを聞いたこともある。ベンチャー経営者らしからぬ落ち着きと社名。でも実はとても熱い人である。そしてビジョンと現実を客観的に語れる人。

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