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ミネベア社長「何もしないと、強さを失ってしまう」

貝沼由久社長インタビュー。ミツミ電機と経営統合、1兆円企業として成長を加速
ミネベア社長「何もしないと、強さを失ってしまう」

貝沼由久社長

 ミネベアの急成長が止まらない。スマートフォン、高機能自動車、航空機など成長領域を着実に捉え、売上高は5年で2倍以上に膨れあがった。さらに、2015年末には電子部品メーカーのミツミ電機と経営統合することを決定。17年4月をめどに、総売上高1兆円近くの企業連合として生まれ変わる。貝沼由久社長に新会社、そして既存事業の展望を聞いた。

 ―経営統合に踏み切った理由は。
 「自動運転、ロボットなどをキーワードに、今後社会は急速に変わる。我々も部品メーカーとして新時代に向き合わないといけない。何もしないと、今花開いている電子機器事業と機械加工品事業の2本柱も、強さを失ってしまう恐れがある。時代の半歩先を行く布陣を作る上で、当社とミツミ電機は最良の組み合わせだ」

 ―どんなシナジーを期待していますか。
 「当社の側から言うと無線、そしてセンサーの技術を取り込めることは大きい。この先非常に重要になる技術だが、我々はまだ弱い。また、照明事業を成長させる上でミツミ電機の電源技術も大いに活用できるはずだ。一方、当社は金型、精密加工といった製造技術が強み。ミツミ電機は我々のノウハウや設備を活用することで、高付加価値な領域でトップを狙えるようになる。例えばコネクター類。ミネベアの超精密金型技術があれば、狭ピッチの製品を生み出せるようになる」

 ―人材面での効果はいかがでしょう。
 「当社は製造の人材は豊富だが、開発の技術者が不足している。統合により、こうした課題を解決したい。出身に関係なく適材適所に配置し、平等に活躍の場を与えていく」

 ―既存事業ではスマホ用液晶バックライトの受注動向が注目されます。
 「バックライトは踊り場とも言える状況。15年12月初旬時点での見通しと比べ、弱い動きになっている。スマホの最新機種が想定したほど売れていない。モデルチェンジの端境期だからなのか、アジア経済の減速に伴うものなのか、原因ははっきりしていない。いずれにせよ、顧客の状況をしっかりと確認しつつ、確実に供給していくしかない」

 ―スマホは18年以降、液晶から有機ELにシフトするとみられています。
 「全てが有機ELになるとは現実的には考えられない。採用対象は一部機種に限られるだろう。また、バックライトはスマホのほか自動車の部品としても展開し始めており、17年度には車向けで200億円近い売り上げになる見通しだ。バックライトは昨期の売上高が1500億円程度。仮に半減しても車向けを加えれば1000億円近くの売り上げになる。これくらいあれば当社にとっては十分。残りは新事業で補う」

【記者の目・新注力領域の成長に注目】
 貝沼社長とミツミ電機の森部茂社長は20年近い付き合いがある旧知の仲。互いの性格、会社の事業内容を十分理解した上で決断したという。「対等の精神」に基き、ミツミの法人格を残しつつ、両社の人材には平等にチャンスを与える方針だ。一方、既存の電子機器事業は転機にある。受注環境の変化が予想される中、照明や計測機器など新たな注力領域でどれだけ成長できるかが見どころだ。
(聞き手=藤崎竜介)
日刊工業新聞2016年1月21日 機械・ロボット・航空機
尾本憲由
尾本憲由 Omoto Noriyoshi 大阪支社編集局経済部
技術や人材などの経営リソースを生かし切るには一定の企業規模が必要なのではないでしょうか。まして部品メーカーもグローバルに競争しなくてはならない時代、もっと多くの1兆円企業が輩出してもよさそうなもの。日本企業同士のM&Aはそのための有効な手段です。人材を死蔵してしまったり、リストラで海外メーカーの草刈り場になってしまうような、もったいない事態にだけは陥って欲しくありません。

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