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中国GDP「想定内」も工業生産伸び率鈍化、インバウンド消費に影響も

25年ぶりの低水準をどう見る。先行き、さらに下振れ懸念
 中国国家統計局が19日に発表した2015年の実質国内総生産(GDP)成長率は7%に届かず、6・9%だった。08年のリーマン・ショックや97年のアジア通貨危機でも7%以上を死守し、6%台の低成長は天安門事件直後の90年(3%台)以来、25年ぶり。中国経済の停滞と原油安が世界経済に負のインパクトを与えている。ただ、中国政府が「新常態」を打ち出し、安定成長へと軌道修正をはかる移行期に入ったなかでの6・9%という数値は予想どおりとの声もある。

専門家の見方


【第一生命経済研究所主席エコノミスト・永濱利廣氏】
 (10―12月期のGDPは市場予想通りだが)信頼性がどうか。数値を真に受けていけない部分もある。例えば、より信頼性が高いとされる(英調査会社の)中国製造業購買担当者景気指数(PMI)は悪化している。他のデータを類推するに、警戒すべき局面は続く。

 輸出の面でも直接的な中国向けのウエートは下がっているが、関係性は薄れていない。生産拠点を中国から東南アジアに移す動きがあり、東南アジアを経由して中国に輸出するケースも少なくない。

 19日に訪日外国人客数が発表されたが消費総額の約4割が中国人だ。貿易面のみならず、日本国内の経済への影響も大きい。中国当局の年明けからの株式市場への対応を見ても今後もリスクが予想される。経済情勢を慎重に見ていく必要がある。

【三井住友アセットマネジメントシニアストラテジスト・市川雅浩氏】
 2015年の中国の国内総生産(GDP)は前年比6・9%増で、政府目標の「7%前後」をほぼ達成できた。ただ15年12月の工業生産は前月に比べ伸び率が鈍化し、小売売上高も月次でみると伸び率が緩やかに回復していたのが一服している。先行きの下振れ懸念が出た可能性がある。

 中国政府は過剰設備の削減など供給側の改革を表明しているが、これでは成長が鈍化する。金融緩和やインフラ投資など、緩やかに成長していくための政策も求められる。

 現在、マーケットはリスクオフの動きを強めているが、供給側の改革と成長のための政策がうまくいけば、中国の大幅な景気減速は回避できると思う。世界景気の足を引っ張ることもないだろう。
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日刊工業新聞2016年1月20日1面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
中国でデフレ懸念が強まり、また設備過剰の解消は加速するだろう。日本企業の中国ビジネスにおける抜本的な戦略転換の時期ではないか。

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