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電力使用量から見えてくる日本経済の停滞感

12月の発受電電力量9.9%減
 電気事業連合会(電事連)がまとめた2015年12月の発受電電力量(速報)は、電力10社の合計で752億5588万キロワット時と前年同月を9・9%下回った。12月としては過去最大の減少率。暖冬で暖房用の電力需要減少が大きく影響した。

 前年同月割れは12カ月連続。また4カ月続けて、10社の発受電電力量がそろって前年同月を下回った。10社が発電した電力量の電源別内訳は、火力が前年同月比14・4%減、水力が同6・3%増、「新エネルギー等」が同2・5%減だった。原子力発電所の発電量は九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)1、2号機の設備利用率が高まり、前の月の13億5000万キロワット時から14億キロワット時に増えた。

主要シンクタンク、16年度のGDP成長率は1.44%


 主要シンクタンクは2016年度の実質国内総生産(GDP)成長率を1・44%と見通している。日本経済研究センターが13日発表したESPフォーキャスト調査(1月調査)によると、シンクタンク41機関の平均予測値は政府見通しの1・7%より厳しい。個人消費、設備投資ともに政府より低い増加率を見込んでおり、政府の強気の成長シナリオに対して慎重な民間予測が目立っている。

 主要シンクタンクは16年度の個人消費を前年度比1・56%増(政府見通しは2・0%増)、設備投資を同3・62%増(同4・5%増)と見通し、政府見通しより見方は厳しい。輸出等もシンクタンクは同4・66%増と、政府見通しの同4・8%増ほど増えないとみる。

 政府は16年度の実質成長率について、15年度補正予算と17年度の消費増税を控えた駆け込み需要で0・7%の成長率の押し上げ効果を見込み、1・7%成長を予測する。
日刊工業新聞2016年1月19日エネルギー面
永里善彦
永里善彦 Nagasato Yoshihiko
国内総生産(GDP)と電力使用量との相関関係は極めて高い。6か月前の7月15日に“電気事業連合会(電事連)がまとめた6月の発受電電力量(速報)が、前年同月比3.7%減で、前年同月比減は6か月も続いている”の記事を読んで抱いた危惧を思い出した。即ち、日本の景気は、安倍首相の言うほど回復基調ではないとの危惧である。あれから6か月、今回(1月19日)の記事によると、依然として前年同月比減が毎月続き、2015年を通して12か月間、すべて前年同月比減である。日本経済に力強さがないことを電事連の速報値は示している。消費税を上げるためには、新たな景気浮揚策を図るべきか。

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