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ロボットは1番じゃないとダメなんです!国際競技会の惨敗を分析する

文=三治信一朗(NTTデータ経営研究所)世界一は情報と人材を引きつける
ロボットは1番じゃないとダメなんです!国際競技会の惨敗を分析する

昨年のDARPAロボティクスチャレンジで優勝した韓国KAISTのロボット

 ロボット業界では、一番になることが重要であると考えている。産業用ロボットでは、当初から生産台数、出荷台数、普及台数ともに、一番であった。このことが、日本のロボット技術が世界一であることの裏付けにもなった。また、二足歩行のロボットを世界で初めて実現したことから、ヒューマノイドロボットにおいても技術力が世界一であるとの定評が確立されてきた。

 特定分野においても世界一であることで、情報と人材を引き付ける力を持つことになる。一番という評価を得るためには、どのような指標、ものさしで測るかということが大切だ。その指標を形作るのは、どのような機能を達成するかという価値に他ならない。指標を作るためのチャレンジの場が必要である。

 その中で、最近のトピックといえば、DARPA(米国防高等研究計画局)が2015年6月に開催した「DARPAロボティクスチャレンジファイナル2015」であろう。参加チームは25チーム(米国11、日本5、韓国3、ドイツ2、その他4)で、韓国チームが優勝した。

 あらかじめ、その評価性能を見極めたうえでの、機能向上が図られたと予感した。韓国勢はこれでかなり勢いを増すと考えられる。韓国は09年時点で米国とは4年のロボット技術の差があったが、11年で2・4年、13年で1・8年となっていた。15年の競技会の結果は、すでにその差はほとんどなくなったという分析を内部できちんと行っているからだといえる。

適用勝負に負けた


 日本勢は最高10位という結果だったが、筆者は技術そのものが負けたというよりも、評価尺度となる指標にフィットした形への適用勝負に負けたと考えている。ロボットという総合技術の活用の場では、何に使えるかとか、その現場を知り尽くしている、あるいは準備しつくしているかといったことが勝敗を分けるのである。

 ただ、そうは言っても、一番であることの意味合いは、開発、競争の促進の観点から、やはり重要であるといえる。経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は昨年12月25日、ロボット国際競技大会の実行委員会と実行委員会諮問会議を発足させると発表した。20年のオリンピック開催に合わせて、ロボット国際競技を具体化していくための組織であり、海外の有識者も交えた錚々(そうそう)たるメンバーをそろえている。

 このような場での、今後ロボット活用が期待される場面を想定しての、指標、ものさしづくりを行いつつ、開発の場へフィードバックするループを回すことは、競争優位を持つための一里塚である。
三治信一朗(さんじ・しんいちろう)NTTデータ経営研究所 事業戦略コンサルティングユニット 産業戦略チームリーダー シニアマネージャー。2003年(平15)早大院理工学研究科物理学及応用物理学専攻修了、同年三菱総合研究所入社。15年NTTデータ経営研究所に入社し産業戦略チームリーダー
日刊工業新聞2016年1月15日 ロボット付
政年佐貴惠
政年佐貴惠 Masatoshi Sakie 名古屋支社編集部 記者
「何でもできるように機能を満載にしたロボット」では結局何もできず、「現場や用途に合わせて作り込んだロボット」の方が活躍できるというのは、震災で学んだ大きな成果の一つ。どんなロボットでも日本が一番の座にあるには何をしたらいいのか、あらゆる立場からの意見が出るとは思うが、競技会と効率的なロボット開発に向けた有意義な議論を進めてほしい。

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