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バター不足解消いつ?洋菓子店など、不足訴え―規制改革会議がヒアリング調査

 慢性的な品不足が続くバターの状況などを踏まえ、政府の規制改革会議の農業ワーキンググループは13日、中小スーパーを運営する日東燃料工業(東京都足立区)、コンビニエンスストアのローソン、東京・自由が丘の洋菓子店ボン・モマン(東京都目黒区)の3社に牛乳や乳製品のヒアリングを行った。

 バター不足ではローソン、ボン・モマンの2社が「需要はあるのに前年比8割程度に供給数量が制限されている」と訴えた。委員の「海外の輸入バターは使わないのか」の問いに対し「フランス製バターを使った菓子などは客人気が高いが、(保護政策で)海外品の方が高いので国産品を使わざるを得ない」と回答があった。

 事務局は「乳業メーカーのヒアリングでは供給不足解消と聞いていたが、明らかに食い違う。流通改革や実態調査をさらに進める必要がある」と話す。答申は6月までに出す予定。

TPP・食品分野こう変わる!生乳確保に不安隠せず


 最近やや緩和されたが、スーパー店頭で品不足が常態化しているバター。環太平洋連携協定(TPP)の大筋合意により、バターは製品換算で当初3188トン、6年目以降に3719トンの新輸入枠が設けられた。脱脂粉乳も同様だ。店頭での品不足は緩和されそうだ。チーズもチェダーやゴーダ、クリームチーズなどは16年目に現行関税が撤廃される。

 消費者にとってはもちろん朗報。乳業メーカーも恩恵が期待できそうだが、現状はどのメーカーも「精査中」「ヨーグルト原料の生乳が十分確保できるか、不安だ」と不安を隠さない。その理由は酪農界の構造にある。

 酪農家は牛乳を高い単価がとれる牛乳として販売したい。バターなど加工原料は低単価のため敬遠しがち。北海道の酪農は規模が大きく競争力が高いためバターなど加工原料向けも供給。都市近郊の県は飲用乳供給とすみ分けてきた。飲用乳は日持ちしないため、関税引き下げ後も国内が主流になるとみられている。ヨーグルトも原料は飲用乳だが、加工原料の輸入増加で国内の役割分担が崩れ、都市近郊県に供給を頼るヨーグルト工場などは原料不足になるおそれがあるという。

 粉ミルクや乳糖、カゼインなども関税が下がるが、乳業大手にとって事業の柱である飲用牛乳やヨーグルトの原料確保が第一。乳業メーカーは今後、酪農家の経営指導や技術指導を強化し、原料の安定確保や品質向上を図るとみられる。国内酪農が崩壊すれば、乳業メーカーの経営も成り立たないからだ。
日刊工業新聞2016年1月14日 総合2面/2015年10月16日 建設・エネルギー・生活1面
昆梓紗
昆梓紗 Kon Azusa デジタルメディア局DX編集部 記者
以前よりはスーパーなどでのバター不足が解消されたように思いますが、量は少ないまま。酪農界の構造問題もあるようです。

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