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「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(11)採算表は会話の道具

京セラ指導で部門別採算を導入した企業は500社。その3割が失敗という現実
「破たん」劇的ビフォーアフター!JALは変わったか(11)採算表は会話の道具

「空港のカウンターの裏で、今月の収支を話し合っている航空会社はない

 日本航空(JAL)が部門別採算制度でグループの収支管理をするために作っている採算表は1000以上に及ぶ。グループ、部、本部と各層で月に1回実施する業績報告会では、この採算表を中心に、前月の実績やその月の計画を話し合う。JALの足元の業績からみれば、すでに一定の成果を上げている部門別採算制度だが、常務執行役員で経営管理本部長の来栖茂実は「京セラもいまだに進化させていて、終わりはない」と、道半ばであることを強調する。

 ある月の業績報告会で名誉会長の稲盛和夫は採算表を見ながら、「月によってこんなに収入が変わるのはなぜか」と指摘した。航空の旅客収入には季節性があり、1―2月はどうしても数字が落ち、月次の業績は赤字になる。航空会社にとってはそれが当たり前だった。経営管理部長の満田温は「指摘を受けて数字を見ると、固定費などの費用も上下していた。収入が落ちるなら費用を抑えて赤字を避けなければならない。思いこみを排して経営することを学んだ」と話す。

 部門別採算制度の導入を進める経営管理グループ長の梅田拓也は「採算表はコミュニケーションの道具。社員を巻き込んでいろんな工夫を生み出すのが目的」と言う。自らの属するグループを独立した会社として経営責任を負い、その意識をもつことが、部門別採算制度の根底にある。採算表はあくまで、その意識改革のきっかけだ。

 来栖は「空港のカウンターの裏で、今月の収支を話し合っている航空会社はないと思う」と話す。空港のカウンター業務を担う子会社に部門別採算制度を導入した成果の一つだが、「全員参加の経営には、もっと社員の近いところに採算表をもっていかなければならない」と、グループのさらなる細分化を課題にあげる。

 京セラも未完成の部門別採算制度。グループ会社に部門別採算制度の導入を進めている関連会社支援部コンサルティンググループ長の田中雅浩は「京セラのコンサルティングを受けて部門別採算制度を取り入れた企業は500社あるが、そのうち3割は廃れてしまった。制度を日々保守管理しないと形骸化する」と話す。京セラから授かった経営改革の根幹を、進化させながら磨き上げていく。(敬称略)
日刊工業新聞2015年03月20日 建設・エネルギー・生活面
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
一連の連載を読むと、稲盛さんがまだ経営へ相当にコミットしていることが分かる。逆に稲盛さんが完全に手を引いた時に、規律や風土が崩れないか心配な面もある。

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